2015年以降、不正会計問題で騒がれている東芝が、また注目を集めています。
簡単にいえば、巨額損失計上で、借金が資産を上回る債務超過に陥る可能性があるというんですね。元凶は、15年末に、東芝の原発子会社であるウェスチングハウスが買収した、CB&Iストーン・アンド・ウェブスター(S&W)です。
買収した当初の想定を大幅に超えるのれんを計上する可能性が出てきた。5000億円規模とも、7000億円規模ともいわれています。
2011年の福島第一原発事故以来、原発事業は、世界市場の状況が大きく変わっています。建設コストより何より「安全」を最優先にする風潮が強くなり、規制変更に伴うコストや、物量増、工期が伸びることによる人件費などが膨らんでいるといいます。
債務超過の可能性があるとなれば、まず心配なのは借入ですが、メインバンクは協調融資をするという。いまのところ、そういう流れですよね。なぜでしょうか。
理由は、やはり原発事業なんですね。
福島原発では、30年から40年かかるといわれる廃炉作業が進行中です。ほかにも、今後数十年の間に、廃炉にしなければならない原発は次々と出てくる。その廃炉作業を手掛けられるのは、いまのところ、国内に、東芝と日立しかありません。その意味では、“国策会社”ですよね。
国としては、原発の技術をもつ東芝を、つぶすわけにはいかない。裏舞台で、東芝と政府筋の間でどういう話し合いがあったのかは定かではありませんが、東芝は、政策投資銀行に支援を求め、政策投資銀行は応じる構えです。だからこそ、メインバンクも協調融資に踏み切ったのは間違いないでしょう。
お金を借りられるとなれば、次に問題なのは、いかに経営を立て直すかです。いま検討されているのが、半導体事業を分社化し、新会社の株式の一部を売却するというものです。
何しろ、東芝のNAND型フラッシュメモリは、韓国サムスンに次ぐ世界第2位のシェアをもち、かりにも分社化すれば、市場価値は2兆円ともいわれていますからね。
ただし、東芝は、不正発覚後に、メディカル事業をはじめ、事業を次々と売却し、稼ぎ頭といえる事業は、いまや半導体以外にありません。その半導体事業を上場し、株式の約20%を売却するとはいえ、まさに「背水の陣」ですよね。
今度の今度こそ、後はないと思わなければならない。東芝は、再建できるのか。経営者も社員も、本気で腹をくくるときがきたといえますね。
東芝では、明日にも半導体事業分社化をめぐって取締役会が開かれるといわれています。発表を注視したいですね。