業界シェア2位のビックカメラが、9~11月期の純利益20億円と過去最高を更新しました。背景には、1970万人を超えた訪日客による“爆買い”があるんですね。
消費税増、少子高齢化、人口減などの影響から、家電製品の売り上げが落ち込み、家電量販店は苦しい状況に置かれています。しかも、アマゾンなどネット通販との価格競争による疲弊も大きい。最大手のヤマダ電機が15年5月、不採算店舗46店を一斉閉店したのは、家電量販店の苦境を象徴しているといえるでしょう。
観光庁の統計によると、訪日客の旅行消費額は、過去最高の3兆4771億円に達しました。なかでも、中国の旅行消費額は総額の4割を超え、初の1兆4174億円となりました。いわゆる爆買いですが、それを巧みに取り込んだのがビックカメラなんですね。
ビックカメラは、都市型に特化した店舗立地に力を入れています。なかでも、2001年の有楽町そごう跡地の出店からもわかるように、駅直結の大型店舗にこだわっています。つまり、訪日客を取り込みやすい立地なんですね。
それどころか、ビックカメラは、訪日客取り込みに向けた積極戦略を打ってきました。2015年12月、中国のLCC「春秋グループ」と業務提携し、訪日中国人に対して、機内やSNSで優待クーポンなどの配布しているんです。いってみれば、飛行機の機内から顧客を取り込み、ビックカメラの店舗に誘導しようという作戦ですね。
このほか、ビックカメラは昨年12月、ワンストップで「食」と「買い物」が楽しめるインバウンド対応店舗をシダックスと共同で新宿・歌舞伎町にオープンさせました。カラオケや日本食が楽しめるコーナーのほか、家電、医薬品、日用品、化粧品など、訪日客を意識した商品がそろっています。
問題は、いつまで爆買いが続くかです。事実、円相場は、昨年後半から訪日客の中心となるアジアの通貨に対して上昇しており、為替面のメリットは薄くなっています。加えて、中国の景気減退懸念が中国からの訪日客数、消費力に影響を与えることは容易に想像できます。
まあ、ひとまず、中華圏の正月にあたる2月の春節までは、訪日客増加の流れは変わらないでしょうし、政府は訪日客数の目標を「30年に3000万人」といっていますから、訪日客の増加の流れは続くと思いますが、肝心の爆買いはいずれ収束するのではないでしょうか。かつての日本人がそうだったように、いまは買い物目当ての訪日客も、いずれは買い物以外に目を向けるはずだからです。
そうなったとき、爆買い頼みの戦略は、見直さざるを得ません。老婆心ながら、いまは爆買いによって好調な企業も、いずれやってくる爆買い後に目を向ける必要があるといえそうですね。