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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

パナの車載事業はまだこれからだ

パナソニックは、10月3日から2019年3月末まで、福井県と永平寺町と共同で、「自動運転EVコミュータ」の実証実験を行います。11月17日までの間、準公道において、「自動運転EVコミュータ」を実際に走らせ、技術課題を確認しているところです。これは、パナの車載事業の並々ならぬ意欲の表れといっていいでしょう。

やや旧聞に値しますが、10月31日に発表されたパナソニックの今年度の第2四半期決算は、車載事業や産業向けデバイス事業の成長などが貢献し、売上高は前年同期比113%の増収、営業利益は同106%の増益となりました。


※パナソニック社長の津賀一宏さん(10月31日)

パナソニックの好業績を牽引しているのは、車載事業なんですね。2012年に社長に就任した津賀一宏さんが、就任以降一貫して注力している事業で、例えば車載用リチウムイオン電池への投資を進めています。

パナの車載事業の売上高は、2016年度に約1兆3000億円でした。それを、18年度に2兆円、さらに2021年度には2兆5000億円にする目標を掲げています。そこまでいけば、自動車業界においてティア1としてトップ10入りとなり、存在感を示せるという筋書きなんですね。

ご存知の通り、いま自動車産業は、自動運転、コネクテッド、電動化など次々と大きな変化の波が押し寄せています。そして、これらの変化を牽引するのは、センサーやカメラ、通信機器、電池などの電子機器やソフトウェアです。つまり、電機メーカーにとって大きなチャンスなんです。

今回の「自動運転EVコミュータ」については、じつは、私は、去る10月10日、横浜市にあるパナの「佐江戸車両試験場」において、デモンストレーションを見る機会がありました。昨年6月にできたばかりの試験場で、オートモーティブ事業の開発体制や取り組みの説明会が行われたんですね。


※赤信号を検知して停止する「自動運転EVコミュータ」

「自動運転EVコミュータ」のデモでは、二人の乗員を乗せた「自動運転EVコミュータ」が、試験コースを自動で走行し、停止したクルマを迂回。影から子どもの人形が飛び出すと、検知して停止。赤信号をも検知して停止した後、青信号になると発車するなどしました。


※停止したクルマや飛び出す人を検知する自動運転EVコミュータ

このほかにも、パナのソナーやカメラを搭載した市販車を使い、バック時に、後方のポールを検知して自動でブレーキがかかったり、駐車枠線を検知しての自動駐車や、縦列などの自動駐車のデモが行われました。いずれも、EVコミュータの完全自動運転の可能性を感じさせるものでした。

パナのオートモーティブへの取り組みは、三つの領域に分けられます。①「快適」すなわち、インフォテイメントシステムやADAS(先行運転支援システム)など、②「安全」すなわち、センシングや画像処理など、③「環境」すなわち、車載用電池などです。

パナは、車載用リチウムイオン電池市場においては、テスラをはじめ、各社のHVやEVなどに採用され、世界シェア1位を誇ります。インフォテイメント設備についても、世界シェア1位です。ただし、ADASや自動運転の分野については、まだそこまで存在感を示せていません。これを強化することが、車載事業の成長には必須です。

「高速道路の自動運転は、条件が限られるなかで高速走行の対応が必要ですが、その分野に関しては、我々は周回遅れです」
説明会の席上、パナソニックオートモーティブ&インダストリアルシステムズ社オートモーティブ開発本部本部長の水山正重さんは、記者の質問に答えて、そのように発言しました。

「高速走行も含めた全体としての自動運転というのは、一通りできるところを目指そうと考えていますが、自力でキャッチアップするだけでなく、アライアンスも含めてのやり方になるのではないかと思っています」(水山さん)

高速領域の自動運転の後れを挽回するため、力を入れるのが、自動駐車を含めた中低速領域なんですね。高速道路に比べ、複雑な条件が重なる市街地などの自動運転は難しい。しかし、高速領域の遅れをキャッチアップするために、まずは、中低速を押さえたいわけですね。

パナソニックが、自動運転技術にどこまで食い込んでいけるかは、今後のパナの車載事業の成長を占うカギになりそうです。パナの車載事業の挑戦は、まだこれからですね。

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