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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

外食チェーンの“驚きの低価格”をアジアへ

“アジアの需要”をいかにして取り込むか。日本企業の懸案の課題ですね。

アジアでは、経済成長と人口増加を背景に、購買力を備えた所得層が着実に拡大しています。今後10年間の間には、中間層の中でもより購買力が高い上位中間層の厚みが増してくるといわれています。人手不足や食材価格の上昇で苦境に陥る日本の外食産業にとって、アジアの消費市場の開拓は、大きなビジネスチャンスです。

日本の外食産業は、1970年代から90年代にかけて大きく成長しました。70年にはケンタッキーフライドチキン、71年から72年にかけてはマクドナルドやロイヤルホストなど、大手外食チェーンが相次いで出店しました。

ところが、2008年のリーマンショック以降、人々は財布のひもを固くしめるようになり、右肩上がりだった市場の成長は頭打ちとなったんですね。

デフレ経済下、日本の外食チェーンは、生き残りをかけて、出店攻勢とコスト戦略へと舵をきりました。

サービスのマニュアル化、セントラルキッチンの導入、物流拠点の集約や共同配送によるオペレーションの効率化などに取り組み、競争力を磨き上げていったんですね。

そうした取り組みの成果が、“驚きの低価格”です。

例えば、イタリアンチェーンの「サイゼリヤ」では、いまなお看板メニューの「ミラノ風ドリア」が税込み290円に据え置かれています。平日のランチタイムは、メインディッシュ、スープ、サラダをワンコインで食べることができます。

日本の外食チェーンは、オペレーションの効率化などを柱とする、独自のビジネスモデルを築き、“驚きの低価格”を実現したといっていいでしょう。

ただし、日本では、もはや低価格というだけでは、顧客をひきつけられません。成長を続けるには、おいしさはもちろん、顧客をあっといわせるサプライズなど、あの手この手で顧客を飽きさせない工夫をしなければなりません。

しかも、顧客の好みの移り変わりはとてつもなく早い。顧客に飽きられないよう、つねにビジネスモデルを変えていく必要がありますよね。

加えて、外食産業は、コストに占める人件費と食材費のウエートが高いことで知られますが、このところの人手不足の深刻化により、これ以上、人件費をはじめとするコストを切り詰めることはむずかしくなっています。

日本の外食産業に成長の道はあるのか。にわかに注目を集めているのが、成長著しいアジア市場への進出なんですね。

2020年のアセアンの中間層、富裕層人口は、5か国合計で4億人近くに達するといわれています。一人当たりGDPを見てみると、2016年に中国は8,113ドル、インドネシアが3,604ドル、フィリピンが2,991ドルです。

日本の一人当たりの名目GDPが10,000ドルを超えたのが、1980年代初めであることから考えてみると、国ごとの違いはありますが、今後、アセアンの消費市場は、おおむね日本の高度成長期と同様の道をたどるだろうと予想されています。

つまり、日本国内ではむずかしくても、アジアでは、これまで日本の外食産業が培ってきた成長モデルが十分に通用するということです。

それに、アジアを旅したことのある人であれば、ご存じだと思いますが、中国やタイ、フィリピンなどには、気軽に外食をする文化があります。例えば、フィリピンの屋台では、100円から150円ほどで食事をすることができます。

女性の社会進出が進むなか、気軽に外食をする傾向はますます高まることが予想されます。ますます、日本の外食チェーンにとってはチャンスですね。

サイゼリヤ、吉野家ホールディングス、大戸屋、ペッパーフードサービス、壱番屋などは、アジアでの店舗数の増加を目ざしています。いずれも、業績は悪くないようです。実際、サイゼリヤはいまや、国内事業よりも海外のほうが高い利益率を上げているといわれています。

低価格、サービス、品質、オペレーションなど、デフレ時代に磨いた競争力は、十分、アジア市場で通用するということですね。

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