昨年は、物流危機、宅配クライシスがいわれましたよね。きっかけとなったヤマト運輸は、値上げ交渉の結果、6割の大口顧客が値上げに応じ、平均値上げ幅は15%以上。宅配便が増加した最大の要因のアマゾンも、値上げを受け入れたといいます。残り4割は、取引を解消した。ヤマト運輸は、これで一つ、区切りがついた形ですね。
ただ、EC(エレクトリック・コマース/電子商取引)市場は年々拡大し、今後も宅配便等取扱個数は増加するのはほぼ間違いありません。国内は労働人口が減少し、人手不足が深刻化するなか、より効率的な物流網の構築が急がれます。
いま、物流の効率化が「業界でもっとも進んでいる」と自負するのが、法人向けオフィス用品のEC国内最大手、アスクルなんですね。荷物の6割以上が自社配送ですね。ヤフーと提携して提供しているB2Cのサービス「ロハコ」では、6時から24時まで1時間ごとの時間指定が可能です。物流倉庫のピッキングロボットなどロボティクスに加え、物流網にビッグデータやAIを導入し、効率を追求しているんですよ。
アスクルは、この効率的物流網を利用して、昨年11月にセブン&アイホールディングスと生鮮宅配サービス「IYフレッシュ」をスタートしました。同年4月に、アマゾンは、やはり生鮮宅配サービス「アマゾンフレッシュ」で日本に攻め込んできましたよね。
EC市場における生鮮の取り扱いは、“鬼門”といわれます。なぜならば、鮮度管理、時間指定など繊細なサービスが求められるからです。ですので、効率的物流網が必須なんですね。“鬼門”だが、しかし、ニーズはある。実際、生鮮宅配市場では、食材や調味料がセットになった「ミールキット」の伸びなど顕著と聞きます。先週末、楽天とウォルマートもまた、生鮮宅配に参入すると発表しました。いよいよ激戦の様相です。
生鮮宅配はもとより、EC市場全体はまだまだ拡大を続けます。注文はサイバー空間でいくらでも受けられる。しかし、実際にモノを届けないと、意味がない。「物流を制するものが、EC市場を制す」といわれる所以です
アマゾンは、今回、ヤマト運輸の値上げをのみましたが、いずれは自社配送を視野に入れているといわれています。先だってトヨタがCESで発表した、「イー・パレット・コンセプト」において、アマゾンは、滴滴出行やウーバー、ピザハットと並んで、パートナー企業の一社でした。無人の自動運転車によって、効率的な物流が実現する可能性がありますよね。
ビッグデータやAIによって、産業構造が大きく変化するといわれ続けていますが、その変化の一端が、物流からも見えてきましたよね。