シャープは4日、経営再建の支援先について台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が有利に進んでいると認めました。
シャープの再建をめぐっては、政府系ファンドの産業革新機構と金融機関が合意に向けて最終調整に入っていると伝えられていました。産業革新機構は3000億円規模の出資額を提示していました。
産業革新機構の本来の役割は、国際競争力を高めるための事業再編や優れた技術をもつベンチャーの支援です。したがって、シャープのように行き詰まった企業の支援には疑問の声が上がっていました。かりに、産業革新機構がシャープを支援することになっても、果たして成功するのかという声もありました。
それに対して、鴻海は、最終局面で支援金額を大幅に上積みし、7000億円を超える規模の資金を投じることを提案しました。また、経営トップの郭台銘会長自らシャープの経営陣に対して再建策を説明し、雇用も守るなどと強調していました。
支援先が鴻海に決まれば、シャープの液晶技術「IGZO」がもっていかれるのではないか、日本の宝である技術が流出するのではないかという不安の声が聞かれたのは事実ですね。しかし、そもそもグローバル化のなかで、「日本の宝」を議論することに果たして意味があるのかどうかという気もします。
中国や韓国などでは、国内産業に補助金を出す重商主義的な政策がとられるケース、いわゆる「新重商主義」があるのは事実です。米国政府も経営破綻したGMを救済しました。また、日本政府も経営破綻したJALを救済しましたね。
また、産業革新機構は、現にソニー、東芝、日立の中小型液晶事業を統合して「ジャパンディスプレイ」を設立しました。
シャープの家電事業は、東芝の白物家電事業と統合する検討が革新機構内で進んでいるといわれています。
ただし、革新機構を所管する経済産業省内部でも、国がシャープを救済する、すなわち民間企業を救うシナリオには疑問の声があるといわれていますね。
ここへきて、7000億円といわれる出資額を提示した鴻海側に交渉が有利に進んでいるといわれていますが、これは、まあ、経済原則からいえば当然といえるでしょうね。
鴻海はいまのところ、事業売却はせず、「シャープ」ブランドを維持するとともに、雇用も確保するといわれています。シャープの記者会見での発言からすると、鴻海が有利なようですが、果たして最終的にどのような決着がつくのか、まだまだ波乱があるかもしれませんね。