家電メーカーがクルマの内装を手掛けるとどうなるのか。パナソニックは、家電事業で培った技術やノウハウを生かした未来のキャビンを国内で初めて披露しました。
※パナソニックの運転席のないクルマのキャビン
パナソニックは3月28日、横浜市にあるオートモーティブ&インダストリアルシステムズ社で、完全自動運転の「レベル5」を想定した、運転席のないクルマのキャビンを公開しました。4人分の座席が向かい合うかたちで配置され、まるでリビングのようです。
家電メーカーならではの工夫は、どんなところにあるのか。一つは、わずらわしい操作を極力、なくしたこと。もう一つは、パーソナルな空間づくりです。
まず、クルマに乗り込むのに、キーは必要ありません。目の虹彩を認識して、ドアは解除されます。
キャビンには、スイッチ類が見当たりません。エアコンの送風口もありません。にもかかわらず、シートに座ると、その人に合わせてきめ細かく空調を制御してくれます。
一人ひとりの座席回りにエアカーテンがつくられ、それぞれのシートを独立したかたちで温度管理します。「ナイノー」の技術でウイルス除去もしてくれます。
「住空間事業で培った技術、ノウハウと車載システム開発力を融合させて、新しいコンセプトの移動空間をつくりました」というのは、パナソニックオートモーティブ&インダストリアルシステムズ社オートモーティブ開発本部副本部長兼総合ソリューション開発センター所長の塩月八重三氏の説明です。
シートを回転させると、ビジネス専用の一人空間に変わります。ディスプレーを活用したTV会議では、回りの音がノイズキャンセルされ、プライベートな空間には、スモークがかかります。
「キャビン全体で提案し、21年から22年に納入したい」と、塩月氏は語りました。
このほか、会場では、自動運転の「レベル2」「レベル3」に対応するコックピットのほか、小型EV向けパワートレーンのプラットフォームが展示されました。
人の運転操作が不要になる「レベル5」のクルマになると、車内の過ごし方は大きく変わるはずです。リビングのようなクルマが主流になるのであれば、家電メーカーの技術とノウハウが生かせるはずです。
パナソニックは、車載事業の売上高目標として、18年度2兆円の目標を掲げています。
21年度には、売上高2兆5000億円をめざし、自動車部品メーカーのトップ10入りを計画しています。
自動車産業は「100年に一度の大変革期」に直面しているといわれますが、パナソニックなどの家電メーカーにとっては、それは大きなチャンスです。
自動車メーカーが持っていない技術やノウハウを生かして、どこまでクルマの領域に入っていけるか。パナソニックのチャレンジが問われています。