EV(電気自動車)のシェア争いに大きな影響力をおよぼすことになるのか。日本の急速充電規格「CHAdeMO(チャデモ)」が、世界標準へと大きな一歩を踏み出すことは、歓迎すべきです。
EVの急速充電器をめぐり、日本と中国の業界団体は8月28日、次世代規格を統一する覚書を交わしました。覚書を交わしたのは、日本規格を策定する「チャデモ協議会」と、中国の「中国電力企業連合会」です。
バッテリーと充電器をつなぐプラグ形状や通信規格は、各国や地域で異なっています。日本の「チャデモ」以外に、欧米勢は「Combo(コンボ)」、米テスラは独自規格、中国は「GB/T」というように、それぞれの陣営が異なる規格を持ち、主導権争いを繰り広げていました。
日中が規格を統一することで、日本の規格「チャデモ」は、世界の急速充電器市場の9割超のシェアを握ることになり、世界標準に近づくんですね。
以前、ブログ「チャデモが世界〝標準規格〟となるには」(2017.6.2)でも書きましたが、国際規格では、欧米が世界標準をとることが多く、過去、日本が主導権を握るケースはほとんどありませんでした。今回、その日本が、世界標準へと大きな一歩を踏み出したのは、〝快挙〟といえます。
いまは違うかと思いますが、なにしろ、過去、日本が〝標準規格〟を提案しても、中国と韓国が必ず反対するといわれましたからね。
一時、規格争いで孤立した「チャデモ」は、今回の中国との規格統一で、一気に強い立場を手に入れることになりましたが、そこに至るまでには、チャデモ協議会会長で、日産取締役の志賀俊之氏の地道な取り組みも大きいといっていいでしょう。
また、日本の「チャデモ」が世界標準を握れるかどうかは、世界一の自動車市場である中国の動向がカギを握ると見ていましたが、その通りになりました。
では、中国はなぜ、日本と手を結んだのか。背景には、日本が中国に「GB/T」の基礎技術を提供したことがあるといわれています。中国側としては、日本との共同開発によって、充電や安全性など、日本の高い技術の取り込みを図る意図もあるとされます。
では、EV大国の中国を味方につけたことで、日本のEVは、中国で売れるようになるのか。独フォルクスワーゲンなど、「コンボ」規格を進める欧州勢は痛手を被ることになるのか。
そう単純な話ではないでしょうね。中国と日本が手を組んだからといって、日系自動車メーカーのEVが中国で売れるとは限りませんからね。
中国はいま、環境問題、渋滞解決、産業振興を狙って、補助金を用意するなど、政府主導でNEV(新エネルギー車)を推進しているのは、ご存じの通りです。
つまり、中国は、補助金政策によってEVシフトを進めていますが、肝心の補助金は2020年末で終了することが予定されており、いつEV市場が縮小に転じてもおかしくはないんですね。
したがって、日本の「チャデモ」が中国と手を結んだのは〝快挙〟ですが、かといって、日本のEVが中国で売れるようになるかというと、そう単純な話ではない。中国の「官製バブル」の崩壊も近いのではないか、という声も聞かれます。
世界の自動車メーカーがEV重視に舵をきったものの、EVがブレイクするには、技術的にも、まだまだ解決すべきことは少なからず存在します。少々、時間がかかると見た方がいいでしょう。〝快挙〟に水をさすつもりは、まったくありませんが、EVの行方については冷静な判断が求められそうです。