日本企業の人事制度は、いま、少子高齢化社会を迎えて、大きく変わろうとしています。
パナソニックは、18日、人事制度に関するセミナーを開催しました。セミナーでは、①キャリア開発応援プログラム、②キャリア開発を目的とした休暇付与と経済的支援、③介護両立応援プログラム、④育児両立応援プログラムの4つの制度を発表しました。
①と②は、「チャレンジや成長の促進」のための制度です。
①は、職業能力開発に資するもので上司が認めたものを、社員が最大3年にわたって、定時退社勤務や短時間勤務、もしくは休業して学ぶことができる制度です。海外の大学院に通って学位を取得することも可能になります。
②は、従来、勤続年数に応じて付与していた10日間の連続休暇を、30歳、40歳、50歳と年齢に応じて付与するほか、同時にカフェテリアポイントを付与するというものです。
③と④は、「キャリアの継続」のための制度ですね。
育児支援の必要性はかねてから指摘されてきましたが、近年、介護による離職も大きな問題になっていますね。
私は、90年代に、すでに複数の大手企業の人事担当者から「せっかく育てた有能な人材が、親の介護のために地元に帰ってしまう」という話を聞きました。
当時は、正直、あまり実感がわきませんでしたが、20年を経て高齢化はさらに進展し、いまや、介護離職は大きな社会問題になっています。
パナソニックは、従来、「仕事」と「介護や育児」を両立しようとする社員に対し、休業や短時間勤務など、「仕事」の負担を減らす支援に重点を置いてきました。
しかし、高齢化や人口減少が進み、労働力の確保は難しくなりつつあります。企業としては、社員の「仕事」の負担を減らすにも、限界がある。
そこで、「介護や育児」をサポートすることで、「無理なく働き続けられるような制度」に改めようというわけです。
具体的には、③では、介護にあたる社員に最大300万円の融資制度を新設。また、介護によって休業する社員に、半年間、従来は40%相当支払っていた賃金を70%相当に引き上げます。さらに、年間9万円を上限として介護費用の半額を負担します。
④は、小学校3年生までの子どもを託児サービスや病児保育などに預けた場合、年間15万円を上限として、費用の半額を会社が負担します。
つまり、残業して夜間保育やシッターを利用したり、病児保育を利用したりした場合、社員の負担は半分で済むようになります。かなり恵まれた制度といっていいのではないでしょうか。
少子高齢化や労働力不足が深刻化するなかで、企業にとって労働力の確保は大きな課題です。
セミナーでは、パナソニック人事労政部部長の千松哲也さんは、「パナソニックは面白い仕事ができる会社だというメッセージでもある」と語りました。
働く人にとって、キャリア開発支援、さらには介護や育児支援の充実が、企業を選ぶ際の基準の一つになりつつあるということでしょうね。