トヨタ自動車とソフトバンクグループは4日、移動サービスに関する新たなサービスで提携し、共同出資会社「モネ・テクノロジーズ」の設立を発表しました。じつは、「モネ・テクノロジーズ」には、豊田章男さんの夢が託されているんですね。
両社は、共同出資会社「モネ・テクノロジーズ」を設立し、トヨタのコネクティッドカー情報基盤「モビリティサービスプラットフォーム(MSPF)と、ソフトバンクの「IoTプラットフォーム」を連携して、新しいサービスを展開する計画です。
トヨタの「e‐パレット」を活用し、宅配事業、病院サービス、移動型オフィスなどを展開する計画で、将来は、グローバル展開も視野に入れています。
「トヨタさんは、モビリティサービス会社になることを宣言されて、新しい世界を切り開いてきました。ソフトバンクとの提携は、時代なんだろうなと思います」と、都内で記者会見したソフトバンクグループ会長兼社長の孫正義さんはコメントしました。
一方、トヨタ社長の豊田章男さんは、次のように述べました。
「ソフトバンクさんとは目指す未来が同じでした。時がきたということだと思います」
共同記者会見の席上、壇上のスクリーンに新会社のロゴ「モネ」が映し出されたのを見て、アレっと思いました。
というのは、古い話ですが、トヨタが97年にスタートさせた新しい情報提供サービスが「モネ(モバイル・ネットワーク)」だったからです。
当時の「モネ」は、トヨタメディアステーションから携帯電話を使って、道路情報やニュース、天気予報、レストラン、ガソリンスタンド、病院などの情報をリアルタイムで提供するサービスでした。
トヨタはまた、96年、国内企画部に業務改善支援室を新設し、ITを駆使した販売店の物流などとともに、新たなお客さまサービスの創出に取り組んでいました。業務改善支援室を立ち上げたのは、当時、課長だった豊田章男さんです。そのとき、私は初めて、章男さんを取材したんですね。
当時、豊田章男さんに「ガズー」の入っている社内を案内してもらった記憶があります。
章男さんはポケットマネーでパソコンを購入し、部下で当時、係長だった現トヨタ副社長で、今回の記者発表でプレゼンテーターを務めた友山茂樹さんと一緒に、お客さま満足度の向上や販売店の業務改善を支援するサービスとして「ガズー」を立ち上げ、新車情報や車検、点検の見積もりなどの機能を載せたのです。
ポケットマネーで新規事業にコミットした章男さんは、あのとき、すでに自動車会社の将来像を思い描いていたと思います。クルマと情報、社会の協調が、新しいビジネスの誕生につながることを夢見ていたのではないかと思います。
ちなみに、「ガズー」は1998年から全国の販売店への展開を始めるとともに、インターネットにホームページを開設しました。その後、99年末にネットショッピング機能として、「ガズー商店街」を加えました。そして、車載通信情報システム「G‐BOOK」の開発につながりました。
さらに、章男さんが取締役になった直後の2000年にお会いしたとき、「ガズー」と「モネ」を合体させるという話を聞きました。
章男さんは当時から、「モビリティサービス会社になる」と構想し、以来、その夢をあたためつづけていたのではないかと思うんですね。
「100年に一度の大変革期」のはるか前、じつに20年もの長きにわたって、トヨタは「モビリティサービス会社」への歴史を築いてきたことになります。
スクリーンに大きく映しだされた「モネ」の二文字に、トヨタの「モビリティサービス会社」への歴史が浮かび上がってくるように、私には思えましたね。