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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

トヨタ「6000億円原価低減」の波紋

トヨタ自動車の第2四半期決算説明会における、ある発言が波紋を呼んでいます。「6000億円くらい原価低減できれば」という副社長の小林耕士氏の〝サプライズ発言〟です。


※トヨタ副社長の小林耕士氏

トヨタは毎年、3000億円規模で製造原価を低減し、営業利益の押し上げを図ってきました。ところが、昨日のブログでも書いたように、自動運転やシェアリングカーなどの普及を前に、増え続ける投資に見合うだけの利益を稼ぐには、3000億円規模の原価低減では十分ではありません。

そこで、小林氏の口から飛び出したのが、「6000億円くらい原価低減できればいい」という、思い切った数字なんですね。

振り返ってみれば、小林氏は、かねてからトヨタの原価低減が3000億円台にとどまることに不満を抱いていました。

「TPSと原価低減は、目新しい言葉ではありません。でも、われわれにとって本当に血と肉になっているかというと、私はそうは思いません」
と、2018年5月9日に開かれた2018年3月期決算説明会の席上、小林氏は述べています。

実際、トヨタの固定費は、年間2000億円以上、5年間で1兆円以上増加しています。増え続ける固定費を原価低減で圧縮したいと、小林氏は考えているんですね。

ホワイトカラーの仕事のプロセスを変えたり、ムダを削減するなど、「カイゼン」による原価低減はもちろん進めるべきでしょう。

課題となるのは、サプライヤーを巻き込んだ原価低減です。

トヨタは、18年度から主要メーカーを対象に、「RRCI(良品・廉価・コスト・イノベーション)」と呼ぶ活動の第3期目の取り組みを始めています。いってみれば、サプライヤーと一体となった原価低減活動です。

10年に活動をスタートさせた第1期では、平均3割の原価低減を目標とし、15年からの第2期では、トヨタの新しい設計思想「TNGA」と連動し、部品の共通化や低コスト化を実現してきました。第3期において、どこまで原価低減を進め、収益率向上につなげていくのか。

トヨタは、鉄鋼メーカーに対して強気です。トヨタと新日鉄住金の18年度上期の「ひも付き価格」の交渉は、新日鉄側が物流費などのコスト増を理由に値上げを求めましたが、トヨタは原料価格の下落を理由に応じませんでした。

トヨタがさらなる原価低減の方向性を打ち出してくれば、鉄鋼メーカーは厳しい判断を迫られそうですね。

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