ホンダは大丈夫でしょうか。ホンダが発表した19年3月期連結決算は、売上高が前期比3%増の15兆8886億円と過去最高でした。四輪、二輪ともに販売台数が増えたとはいえ、営業利益は12%減の7263億円でした。
※ホンダ社長の八郷隆弘さん
いつものことながら、四輪事業の不振を世界販売台数2020万台を超える二輪事業が支える構図ですね。
「事業体質は、少しずつ良くなっています。私の感覚では、7合目くらいです。もう一段、体質を変えていきたい」と、社長の八郷隆弘さんは述べました。
決算に先立って行われた事業説明会で、八郷さんは、四輪事業の体制強化について説明し、車種の派生商品数を25年までに現在の3分の1に削減するほか、生産にかかわる費用を10パーセント削減する方針を明らかにしました。
問題は、この期に及んでなおも、ホンダが四輪事業の体質改善に四苦八苦していることです。
振り返ってみれば、ホンダの前社長の伊東孝紳さんが12年、16年度に四輪販売600万台という数値目標を掲げ、拡大路線に手を染めました。「6極体制」の名のもとに、世界各地に工場を新設し、地域ごとの専用モデルを導入してきたわけですが、その拡大路線がいまもなお、ボディーブローのようにホンダを痛めつけているんですね。
四輪事業の収益化を急ぐホンダに対して、世界の自動車メーカーはというと、自動運転やシェアリング、電動化など、いわゆるCASEへの対応に真正面から取り組んでいます。
各自動車メーカーとも、熾烈な販売競争を戦いつつ、次世代技術の開発、サービス分野の開拓に力を注いでいるんですね。
ライバルのグーグルやアマゾンと戦うには、研究開発費もいくらあっても足りません。各自動車メーカーは積み上がる研究開発費に危機感を持ちつつも、新たなライバルとの本格的な戦いを前に、研究開発費を捻出する努力をしています。
あるいは、足らざる資源を補うため、提携関係を築いています。
世界の自動車メーカーの間では、いま「死ぬか、生きるか」の強い危機感が渦巻いているといっていいでしょう。
ところが、八郷さんから、危機といった言葉が聞かれることはありませんでした。加えて、次世代に向けたクルマの末来像についても聞くことはできませんでした。
ホンダも当然のことながら、ハイブリッド車や電気自動車などの技術開発を進めています。また、GMクルーズと自動運転技術を活用したモビリティの変革を進めています。
ただし、事業方針説明会の席上、社長の八郷さんから、どんなクルマの末来像を描いているかについて言及がなかったのは、残念だったといわざるを得ません。