コンパクトカーは、3つの宿命を背負っています。排気量が小さくても走りを疎かにはできないし、ボディーサイズが小さくても安全で快適な室内空間を実現しなければいけない。そして、何よりも手ごろな価格が絶対条件です。
※新型「ヤリス」
新型「ヤリス」は、いかにしてコンパクトカーの宿命を乗りこえたのか。カギを握るのは、TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)」の導入です。
トヨタは、リーマン・ショック後、「もっといいクルマ」を賢く、効率的につくるために、クルマづくりの設計思想「TNGA」の導入に踏み切り、15年発売の4代目「プリウス」以降、「TNGA」の取り組みを反映したクルマを順次市場投入してきました。
そして、いよいよ小型車に「TNGA」を導入したんですね。
「新型ヤリスは、「TNGA」の第四弾となる、コンパクトカー向けプラットフォーム「GA‐B」を採用する最初のクルマになります」と、トヨタ副社長の吉田守孝氏は説明会の席上、述べました。
社長の豊田章男氏は、かねてから「いいクルマの原点はコンパクトカー」と述べていますが、「TNGA」をコンパクトクラスに展開したことは、大きな意味があります。
というのも近年、トヨタのクルマは「少し価格が高いのではないか」という声が聞かれているからなんですね。
なぜ、価格が高いといわれるのか。その理由は、ズバリ、安全装備の搭載です。実際、安全装備や運転支援システムをつければつけるほど、クルマの価格は上がっていきます。
その意味で、もっとも価格に敏感でなければいけないコンパクトクラスに「TNGA」を導入することによって、トヨタは「価格が高いのでは」という声にこたえることになります。
「安全装備にお金がかかる分、プラットフォームにかかる費用は『TNGA』によってできるだけ抑えました」というのは、開発者のコメントです。
例えば、新型「ヤリス」には、トヨタ初となる高度駐車支援システムを搭載しました。事前に駐車位置を登録すれば、白線のない自宅の駐車場でもハンドル、アクセル、ブレーキを制御し、駐車に必要な操作を支援します。
トヨタが、世界初となるこの「メモリ機能」をコンパクトカーに搭載できたのは、「TNGA」で、商品力の向上と開発コストの削減の両立を図ったからにほかなりません。
今後、新型「ヤリス」に登用されたGA‐Bプラットフォームは、トヨタの先進国向けコンパクトカーに順次、採用される予定です。
これまで、「TNGA」のコスト削減効果は期待したほどではないという声がありましたが、台数の多いコンパクトカーへの導入を機に、「TNGA」効果は大きく高まるとみていいでしょう。