トヨタの2019年4~12月期連結決算は、売上高が前の年の同じ時期に比べて、1.6%多い22兆8301億円で、この時期としては過去最高となりました。なかでも、市場全体が減速する中国で販売を伸ばしているんですね。
※トヨタ2020年3月期第3四半期決算説明会
トヨタはなぜ、市場全体が減速する中国で販売を伸ばすことができたのか。
始まりは、2018年5月、中国の李克強首相が苫小牧のトヨタ自動車北海道を視察に訪れたことにさかのぼります。出迎えたのは、社長の豊田章男氏でした。
「李克強氏の訪問以来、中国はトヨタに強い関心を寄せるようになりました」と、6日の決算会見の席上、副社長のディディエ・ルロワ氏は述べました。
1年後の19年4月、トヨタは中国の精華大学と連合研究院を設立し、環境問題の解決や交通事故の低減につながる新技術の研究開発について、5年間にわたる共同研究の実施を発表しました。精華大学の学長の招待で同大学を訪問した、豊田章男氏は次のように語っています。
「昨年5月、李克強首相とお話させていただいたことがすべての始まりで、今回の連合研究院の設立にいたりました。中国の発展に関与する機会をいただき、うれしく思っています」
以来、トヨタは中国とがっちり信頼関係を結び、新たな設計開発手法「TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)」を導入した「CH‐R」などの投入により、中国市場の巻き返しを図ってきたんですね。
中国といえば、ご存じのように、新型コロナウイルスの蔓延で消費や生産への影響が懸念されています。果たして、どの程度の影響があるのか。「いまの段階では影響の広がりは読めない。事実が明確になり次第、説明していきたい」と、決算会見の席上、執行役員の白柳正義氏は述べました。
もちろん、新型コロナウイルスの影響が長引けば、トヨタの業績に影響が出る可能性はありますが、「部品の在庫状況や代替生産が可能かどうかを精査しています」と、白柳氏が述べたように、トヨタはすでにBCP(事業継続計画)の観点から適切な対策をとっていると考えていいでしょう。
11年の東日本大震災やタイの洪水などの経験のもとに、トヨタは、サプライチェーンの見直しなど、確実に対策を講じています。今回もまた、過去の経験を生かして、その影響を最小限に抑えるに違いありません。
現に、次年度におけるグローバル市場の縮小は避けられないものの、トヨタは世界販売台数の1%増加を見込んでいます。
ビジネスにリスクはつきものです。次々とあらわれる課題に確実に取り組むとともに、着実な成長に向けての備えを怠らないことこそ、トヨタの真骨頂といえます。