日立は、すべてに慎重かつどっしりと落ち着いた企業イメージが強い。その日立のイメージを覆す〝ニュー日立〟の誕生だ。会長の中西宏明氏が経団連会長に就任し、日本企業のリーダーとして目覚めたというべきか。
日立製作所は26日、緊急事態宣言の解除後も在宅勤務を標準とすることを発表しました。企業の間では、コロナ後のニューノーマルを見据えて在宅勤務を取り入れるなど、働き方を見直す動きが相次いでいますが、日立が先陣を切って具体的な方向性を打ち出したことで、在宅勤務の動きが一気に加速しそうです。
日立は、先月の緊急事態宣言以降、全社でおよそ7割の従業員が在宅勤務をしてきましたが、宣言解除後も、現在の体制を7月末まで続け、それ以降も、週2~3日は在宅で仕事ができる状態を継続する計画です。
在宅勤務を進めるためには、業務の透明性と同時に、時間で管理する働き方から成果で評価する働き方への移行が求められますが、日立は、ジョブディスクリプション(職務定義書)で社員の職務を明示し、その達成度合いなどを見る「ジョブ型」雇用を本格導入します。
また、押印や会議のための出社を減らすための業務改革も進めていきます。
中西氏は経団連会長として、もともと終身雇用制をはじめとする雇用慣行全般の見直しを強く求めてきましたが、今回、日立が在宅勤務の標準化を打ち出したことにより、動かなかった山が、ついに動いたという印象です。
そのインパクトは大きい。日立の快挙といえるでしょう。
新型コロナは、日本企業にとって、悪しき慣習を変える好機でもあります。テレワークによって、IT導入に弾みがつき、これまでの働き方を再考する機会になりましたからね。これは、生産性向上が求められる日本企業にとって避けては通れない課題だったといえます。
在宅勤務の標準化がもたらす影響は小さくありません。企業は、都心にオフィスを構える必要がなくなるかもしれませんし、従業員の住まいも都心である必要はなく、郊外の広い家に住めるかもしれません。満員電車に乗って通勤する必要もなくなります。
今回、日立が、コロナ後も在宅勤務を標準とする働き方を打ち出したことで、それに続く企業が増えることは間違いないでしょう。
在宅勤務の標準化は、日本企業の雇用慣行の見直しを一歩も二歩も進めることになるに違いない。それは、コロナ後の日本企業の再成長には欠かせません。
そのことは、成果主義、ジョブ型雇用など、日本企業がこれまで深く踏み込めなかった人事改革を進めるきっかけになりそうです。