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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

ソニーグループ吉田CEOが「パーパス」を大切にする理由

ソニーグループ会長兼社長CEOの吉田憲一郎氏は、社長就任以来、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」といい続けてきました。ソニーグループの「パーパス(存在意義)」ですね。吉田氏が「パーパス」をどう活かすか、どう浸透させるか。ソニーのもう一段の成長のカギがそこにあります。

ソニーグループは26日、2021年度経営方針説明会を開き、会長兼社長CEOの吉田憲一郎氏が、「クリエイティビティ」「テクノロジー」「世界」をキーワードに経営方針についてオンラインで発表しました。

ソニーグループの2021年3月期の通期連結業績は、最終的な儲けを示す当期純利益が1兆円を超え、売上高、本業の儲けを示す営業利益と合わせて、いずれも過去最高となりました。ソニーグループは、その先の成長をどう見ているのか。

2018年4月にソニー社長兼CEOに就任した吉田氏は、83年にソニーに入社、財務などの管理部門を経て、ネット子会社のソネットに転じた経歴をもちます。2007年にソニーのグループ役員に復帰し、以降CFOとして財務の立て直しに力を注いできました。

〝財務の顔〟のイメージが強い吉田氏でしたが、ここへきて本物の〝経営者の顔〟となりましたよね。

吉田氏はCEO就任以来、ソニーの「パーパス(存在意義)」について、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」と、ことあるごとに語ってきましたが、今日の経営方針説明会では、「パーパスで経営を語れるかどうか。私にとってのチャレンジです」と語り、あらためて「パーパス」の重要性について触れました。

ソニーに限ったことではありませんが、これからの企業は、「パーパス」、つまり存在意義の明確化を避けて通ることはできないでしょう。なかでも働く人にとって、なぜ会社が存在するのか、そこにどうコミットするかが、これまで以上に重要になってきます。

この点について、吉田氏は、「社員の人生において、ソニーという会社に情熱を傾けられるかどうかが重要になってくると思います」と述べました。

ソニーが一段上の成長を目指すには、社員が高いモチベーションをもって働くことが大切です。

吉田氏は、コロナ禍における「プレイステーション5」の中国での量産ラインの立ち上げは、社員の高いモチベーションと実行力なくしてありえなかったとコメントし、次のように語りました。

「企業文化が社員の実行力を担保しました。それは、戦略よりも大事なことかもしれません」

ソニーといえば、先端テクノロジーやプロダクツ、サービスばかりに目を向けられがちですが、じつはソニーは創立以来、「人」をもっとも重要な経営資源と考えています。また、創業者の一人、井深大氏が「実力本位、人格主義」「個人の技能を最大限に発揮」としたことからもわかるように、「人」を「個」としてとらえることでも突出しています。

そうした「人」に対する考え方が、これからのソニーの強みとなり、ソニーを引っ張る力になることは間違いないでしょう。

デジタル化、グローバル化、そしてコロナ禍の中で、企業は新たな人材活用に取り組み始めています。「個」の活用を重視してきたソニーが、その先頭に立って、個人のやる気を引き出し、才能を開花させる仕組みづくりにどう取り組むのか。

それは、ソニーのもう一段の成長に資すると同時に、人材活用に悩む日本の会社にとっての解になるのではないでしょうか。

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