三菱自動車工業が27日発表した2021年度第1四半期の純損益は、前年同期の1762億円の赤字から61億円の黒字に転換しました。主要マーケットのアセアンのほか、豪州、北米などで自動車需要が回復したことや構造改革による業績改善が要因です。
業績改善に寄与したのが、この4月、北米に投入した新型「アウトランダー」の成功です。北米では、「アウトランダー」を含めた第1四半期の販売台数が3万9000台となり、業績回復を牽引しました。
また、北米市場ではかねてから、インセンティブの抑制が図られてきましたが、そのことも採算の改善に貢献しました。
「数字はご容赦願いたいのですが、総じてかなり下がっているのは事実です」と、代表執行役副社長の矢田部陽一郎氏はインセンティブ抑制について説明しました。
また、同日発表した通期の業績予想について、経常損益は予想を上回る360億円としています。
ただ、安心してはいられません。ワクチン接種が進む北米などで需要回復が見られるとはいえ、感染再拡大など先行き不透明な部分があることに変わりはないからです。実際、強みのアセアン地域では、現在も、販売店の閉鎖が続いています。インドネシアで140店舗、ベトナムでも半分の販売店が閉鎖されたままです。
「追い風と逆風が同時に吹き荒れている状況です」
と、代表執行役副社長の池谷光司氏は、オンライン会見で述べました。
つまり、コロナ禍での新車需要の減少からの回復があるとはいっても、業績は引き続き不安定な状況にあるということでしょう。
「半導体不足のほか、原材料価格の高騰、コンテナ不足がリスクです」と、池谷氏はコメントし、半導体不足による生産への影響は、通期で4万台と説明しました。
その一方で、コロナ禍による部品の供給不足については、いまのところ影響は出ていないようです。
三菱自動車に限ったことではないでしょうが、自動車メーカーはいま、「前門の虎、後門の狼」といったところでしょうか。
コロナ危機からはなんとか身を守っても、半導体不足、原材料価格の高騰、コンテナ不足と、すでに「狼」が侵入してきている――。
需要はあってもつくれない。自動車メーカーは、ジレンマに直面しています。果たして、自動車の販売台数の回復に水を差す「後門の狼」との戦いに勝ち残ることができるでしょうか。