トヨタ自動車は19日、9月の世界生産台数が計画の90万台から4割減の54万台程度になる見通しだと明らかにしました。東南アジアで新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化し、部品の調達が滞っていることが主な要因です。日本経済の回復を牽引してきた自動車業界は、大きな試練に直面しています。
トヨタが19日に発表した生産調整の地域別内訳は、日本14万台、北米8万台、中国8万台、欧州4万台などです。国内では、グループ会社を含めた全14工場で生産調整を行い、期間は最大で約1か月に及びます。
プリウスやカローラ、RAV4、ヤリスなど主要車種の多くに影響が出ると見られています。
これまでトヨタは、世界的な半導体不足では、直接取引をしていない調達先を含む状況を把握できる情報システム「レスキュー」を活用するなどして、影響を最小限に抑えながら生産に取り組んできました。しかし、トヨタといえども新型コロナの影響を完全に阻止するのは容易ではないわけですね。
自動車部品メーカーが多い東南アジアでは、変異株が拡大しています。自動車部品メーカーの中には、政府の移動制限の影響を受けて、従業員が通常通り出勤できないところもあるようです。
仕入先の部品工場が稼働停止になれば、必要な部品は確保できず、生産計画に影響が出るのは必須です。
ただし、トヨタは今回の減産リスクを織り込んでいるとして、2022年3月期の業績見通しや年間の生産計画930万台は変えていません。このあたりが、トヨタといえますよね。
トヨタはこの2年間、新型コロナの影響についても目配りをしてきましたが、変異株の感染拡大が決定打となりました。変異株おそるべしです。変異株の対応策については、世界中がお手上げ状態です。さすがのトヨタも、変異株の大波には逆らえないというわけですね。
トヨタがこの難局を乗り切る力となるのは、強靭なサプライチェーンの構築と調達力でしょう。実際、トヨタがこれまで半導体不足をそれなりに回避し、国内生産を維持できたのも、仕入先との連携のほか、約4か月分の在庫確保など、調達力の底力によるものです。
トヨタ以外の自動車メーカーにも影響が広がっています。世界的な半導体不足が解消されないなかで、自動車各社は変異株の猛威に襲われているわけです。その影響はどこまで続くのか。先行きは見通せない状況です。
欧米諸国や中国では、景気が上昇傾向にあり、自動車市場も回復に向かいつつあります。早期の稼働再開に向けて各メーカーの危機対応が問われていますね。トヨタの実力の見せ所といえるでしょう。