「ジオフェンス」とは、ジオグラフィー(地図)とフェンス(境界)を組み合わせた用語です。トヨタは「ジオフェンス」を使って、いったい何を実現しようとしているのか。
トヨタ自動車は、HV(ハイブリッド車)、PHV、EV、FCVまでを幅広くそろえる「全方位」でカーボンニュートラルに取り組んでいます。世界的に見れば、グリーン電力が十分でない国も少なくないことから、現時点では必ずしもEVがカーボンニュートラルの正しい選択肢とは限らないと、トヨタは考えているんですね。
「EV化は一つのソリューション。目標はあくまでもカーボンニュートラル」と、社長の豊田章男氏は語っています。
実際、CO2の問題をトータルに解決するために、HVやPHVにできることはまだまだあるはずです。
HVは、ガソリンで動くエンジンと電気で動くモーターの2つの動力を持っていて、2つの動力を上手に使い分けることで、走っているときのCO2をガソリン車に比べて大きく減らすことができます。
PHVは、ハイブリッドカーと電気自動車を融合させて進化させた車で、ハイブリッドカーよりバッテリーの容量が大きいので、モーターだけで走れる距離が長く、ハイブリッドカーよりもさらにCO2を減らせます。
つまり、HVやPHVでCO2を減らすカギは、エンジンとモーターの2つの動力の使い分けです。それを助けてくれるのが、「ジオフェンス」といわれる技術なんですね。
「ジオフェンス」とは、位置情報を使った仕組みの一つです。特定の場所に仮想的なジオフェンス(境界)を設け、対象がその境界に入ったとき、あるいはその境界から出たとき、ソフトウエアで所定のアクションを実行します。
「エンジンで走る、モーターで走る、その2つをジオフェンスでコントロールし、規制区域まではHV走行し、規制区域に入ったらEV走行するという使い方ができるんですね」と、トヨタ自動車執行役員の山本圭司氏は25日、オンラインで開かれた「ソフトウエアとコネクティッドの取り組みに関する説明会」で述べました。
つまり、市街地でEV走行しか許可されていない場合、HVをEVモードに自動制御して走らせることができるわけです。
トヨタは「ジオフェンス」を導入し、クラウド上の規制情報を読み取ることで、エンジンとモーターの2つの動力の切り換えをリアルタイムで行うことを想定しています。
厳しい環境規制への対応は簡単ではありませんが、「ジオフェンス」はその解の一つとなるのではないでしょうか。