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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

〝二輪車大国〟だった日本。その栄光は取り戻せるか

ホンダ、ヤマハ発動機など、日本には世界有数の二輪車メーカーがあります。ホンダの世界の二輪車販売台数は19年度約1900万台で、世界一の二輪車メーカーです。ホンダは過去、四輪車の販売不振を二輪車の海外販売でカバーしてきました。黒字を確保しているのも、世界での二輪の健闘があるからです。

ところが、ホンダに限らず、国内の二輪車販売は惨憺たるものです。経済産業省は、新たに策定した2030年までの「二輪車産業政策ロードマップ」において、国内販売100万台を目標に掲げました。二輪車産業を盛り立てていくには、四輪同様、官民一体となった取り組みが不可欠です。

日本は過去、年間700万台の生産と300万台の国内販売を誇る二輪車大国でした。ところが、今日、生産ではインドや中国にその座を奪われ、国内市場も縮小の一途にあります。20年の二輪の国内販売台数は約36万台です。目標の100万台を達成するのは並大抵のことではありません。

二輪市場縮小のおもな背景には、少子高齢化による需要減、日本独自の免許制度、高い高速道路料金、「3ない運動」の逆風などがあります。

二輪車産業が今後、量的、質的に成長することは可能なのか。

経済産業省と二輪車業界は2013年以降、毎年「バイク・ラブ・フォーラム」を開催し、二輪車産業の活性化に向けた取り組みを行ってきました。今回、経産省が策定した新たなロードマップでは、国内販売100万台をありたい姿として掲げているほか、日本ブランド車の世界シェア5割を目標にしています。

その実現に向けては、20年に526人だった二輪車による事故死者を30年までに20年比で半減させ、50年にゼロにすること。また、カーボンニュートラル実現に向けた電動二輪車や合成燃料対応車の普及、高速道路の利用料金の見直しなどへの働きかけ、レンタルやシェアリングなどの新たな利用形態の普及などに取り組む計画です。

喫緊の課題といえるのは、カーボンニュートラル実現への対応でしょう。四輪同様、二輪車もガソリンエンジンからの脱却が求められていますが、二輪の電動化は四輪以上に困難がともなうといわれます。

第一に、二輪にはバッテリーを搭載するスペースが十分にありません。また、二輪は手押しの場面があることから、四輪以上にバッテリーの軽量化が求められます。充電方法にも課題が残ります。電動化を進めるには、充電したバッテリーを手軽に交換できる街中のスタンドをつくることが求められるでしょう。

ヤマハ発動機社長の日髙祥博氏は、オンライン会見で次のように述べました。
「二輪の課題は、バッテリーを積むスペースが限られていることです。まずは、走行距離が限られる原付で電動化を推進していきたい。また、バッテリーの標準化を進め、街中のインフラ整備を進めていきたい」

四輪では11月18日、トヨタ自動車社長の豊田章男氏の自工会会長の続投が発表されるとともに、ホンダ、日産、スズキの3人の社長が副会長に加わる6人の副会長体制がスタートしました。いってみれば、四輪では、業界を一丸となって発展させる体制が整ったわけです。

二輪業界を引っ張るリーダー役は、ヤマハ発動機社長の日髙祥博氏です。論客で知られる日髙氏がいかなる手腕を発揮して、二輪業界の活性化を図るのか。生粋のバイクファンでもある日髙氏による〝二輪大国日本〟の復活はなるか。

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