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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

トヨタ、EVの景色を変える

「EVに後ろ向き」といわれてきたトヨタが、EV強化に転じたことで、世界のEV競争の景色が一気に変わりました。世界トップメーカーであるトヨタによるEVへの本格参入は、欧米メーカーにとって少なからぬ脅威になるはずです。トヨタが仕掛けた〝EV最終戦争〟に、欧米の自動車メーカーは身構えざるを得ないといえるでしょう。


トヨタは14日、EVの世界販売目標を上方修正し、2030年に350万台まで増やすと発表しました。2030年までに乗用車から商用車までフルラインナップで30車種を投入。EVの開発や生産設備に4兆円を投じることも明らかにしました。
欧米の自動車メーカーを中心に、競うようにEVシフトが打ち出されていますが、考えてみれば、これまで欧米の自動車メーカーは、世界のトップメーカーのトヨタの存在を意識することなく、EV競争に邁進することができたといえます。

ところが一転、トヨタがEVへの積極姿勢をアピールしたことで、一気に景色が変わりました。あまり知られてはいませんが、トヨタにはEV開発の実績があります。EVの開発効率も確実に上がってきています。欧米の自動車メーカーは安閑としてはいられないはずです。

とりわけ脅威を感じているのは、EVに対する期待値が急速に高まっているラグジュアリーセグメントを攻める自動車メーカーでしょう。

トヨタは、高級車ブランド「レクサス」については、EV中心のブランドへ進化させると表明。レクサスのEVを30年までに欧州・北米・中国へ投入し、100万台の販売を計画しています。35年にはレクサスの世界販売すべてをEVにすることを目指します。

これは間違いなく、テスラを意識しているといっていいでしょう。

テスラは、既存の自動車メーカーとはビジネスモデルがまったく違います。高額なクルマをディーラーを通さずに直販し、車種構成も非常にシンプルです。

しかも、テスラはEV専業メーカーです。対するトヨタは、ハイブリッド車など電動車を全方位で展開する戦略を掲げています。

テスラの時価総額がトヨタのそれを上回ったことが話題になりましたが、果たしてテスラの快進撃は続くのか。トヨタは、テスラに負けるとは思っていないでしょう。

注目したいのは、「レクサス」がトヨタのEV戦略をリードする形をとったことです。

「レクサスはとくに、BEV(バッテリーEV)の方向にシフトしていきたい。ラグジュアリーセグメントでは加速に対する感度が高いが、ガソリンエンジンで出せない加速をモーターであれば出せるかもしれない。EVは、ワクワクドキドキする末来を提供してくれるオポチュニティと思っている」と、チーフ・ブランディング・オフィサーの佐藤恒治氏はコメントしました。

今後、ものをいうのは、「レクサス」ブランドが積み上げてきた財産です。トヨタのEV戦略は、着実な土台の上に進められているといえそうです。

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