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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

エンジンは滅びない。〝モータースポーツ愛〟がある限り。

ホンダは、12日に行われたモータースポーツの最高峰フォーミュラワン(F1)の今期最終戦で30年ぶりに王座を手にし、F1最後の年を有終の美で飾りました。ホンダはF1にかけてきた運営費や人材をEVの開発に振り向け、脱エンジンを加速させる計画ですが、F1撤退を惜しむ声は少なくありません。

※スーパー耐久最終戦に水素エンジン車で参戦したルーキーレーシング(岡山国際サーキット)

脱炭素の波を受け、モータースポーツはどうなっていくのか。エンジンを残したまま、脱炭素時代に生き残る方法として、トヨタをはじめとする日本の自動車メーカーは、水素エンジンや「e-fuel」をエンジンで燃やす技術の開発を進めています。

「少し大げさかもしれませんが、エンジンは人類がつくった工業製品として芸術的な技術だと思っています」と、トヨタ・チーフテクノロジーオフィサーの前田昌彦氏は 12月14日に開かれた会見で述べました。

トヨタが水素エンジンの開発に力を入れるのは、エンジンを残したままでも、脱炭素に貢献できることを示すためです。トヨタは2021年、水素エンジン車で計4回の耐久レースに参戦、水素エンジン車の実力を進化させました。2021年の最終戦となった岡山の耐久レースでは、水素エンジンのパワーである出力を20%、駆動力のトルクを30%向上させました。2022年もレース参加を継続させる計画です。

水素エンジン車の実用化には、10年かかるのではないかという声もあります。だからこそ、トヨタはレースを通じて開発スピードを早めようとしています。

「アジャイルな開発を進め、レースというオープンな場で未完成な技術にトライしていくことが重要」と、トヨタ社長の豊田章男氏は述べています。

モータースポーツは、「走る実験室」といわれるように、クルマの開発、ひいては自動車産業の発展に欠かせません。エンジン車を応援するという意味においても、その存在は大きいといえます。

残念ながら、ホンダはF1撤退を決めましたが、そのほかの日本の自動車メーカーはというと、むしろここへきて、モータースポーツ活動の存在意義を再認識しているように見えます。

トヨタ社長の豊田章男氏は、自ら「モリゾウ」を名乗ってレースに参加していますし、モータースポーツを起点にした「もっといいクルマづくり」を進めていることはご存じの通りです。「GRヤリス」をつくったのも、世界一過酷な道といわれるWRCで勝つためです。

今年からWRCにフル参戦している「トヨタガズーレーシングWRCチャレンジングプログラム」の育成選手、勝田貴元氏は、「いろいろな道を走ることで、いろいろなデータを取ることができる。それは市販車にもものすごくフィードバックされている」と語っています。

日産は17日、モータースポーツ事業とスポーツ車の企画開発を手がける完全子会社2社を2022年4月に統合すると発表しました。レースのノウハウをつぎ込んだスポーツ仕様車の開発力を高めて、国内外でのブランド力の向上につなげるのが狙いです。

マツダはスーパー耐久シリーズや全日本ラリーのほか、すべてのロードスターで参加できるロードスターカップなど、参加型のモータースポーツを手掛けています。

世界最高峰のレースに勝負をかけ、技術を磨く――。

モータースポーツは極限を追求する冒険です。だからこそ見る人に感動を与えます。モータースポーツに挑戦したい、モータースポーツで感動を分かち合いたいという声が聞こえる限り、日本の自動車産業の成長は続くことでしょう。そして、エンジン車がなくなることはないはずです。

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