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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

ソニーグループとホンダの〝JV〟の意味

ソニーグループとホンダは4日、モビリティ分野における戦略的提携に向けて基本合意したと発表しました。年内に両社で新会社すなわちジョイントベンチャーを設立し、2025年にEVの最初のモデルの販売開始を目指します。異業種同士の提携は、日本の産業の末来を左右するビッグニュースです。

「われわれの技術や経験と、ホンダが長年培ってきた開発力や車体製造の実績をかけあわせ、モビリティの進化をリードできるように取り組んでいきたい」と、ソニーグループ社長の吉田憲一郎氏は会見の席上、述べました。

ソニーとホンダの共通項は、つねに新しいものに挑戦するチャレンジ精神といわれてきました。ホンダ社長の三部敏宏氏は、両社の創業の歴史について触れながら、「歴史的、文化的にシンクロするところの多い企業」と語りました。

確かに、両社の組織文化は類似点があります。

EVには、電気自動車だからこそ提供できる新しい価値の創造が求められています。その意味で、両社は一見、最強の組み合わせに見えます。新しい価値創造を両トップは口裏を合わせたように語りました。

問題は、いまのホンダがかつてのようなチャレンジ精神を持ち合わせているかどうかということです。「ホンダらしい」革新的な商品が減っているといわれる中で、ソニーとのジョイントベンチャーで存在感を発揮するには、かつての気風を取り戻さなければならないでしょう。

もっともソニーにとって、クルマという未知の領域に挑むには、ホンダの力を借りなければならなかったのは事実です。

ソニーは、4年前からEVの開発をはじめ、試作車「VISION-S」を公開、この1月には、EVの市場投入を本格検討していることを明らかにしていましたが、EVの本格的な事業化にあたっては、実績のある自動車大手と組むことは必須でした。

つまり、ソニーはクルマという未知の領域に挑むにあたってのミッシングピースをホンダによって埋めることができたといえます。実際、初期モデルの生産はホンダの工場に委託される計画です。

ただ、見えにくいのが、ホンダにとってのジョイントベンチャー設立の意義です。三部氏は、新会社でつくる商品は「ホンダのBEVとは別モノ」と強調し、ソニーとのジョイントベンチャーとは別に、ホンダとして独自にEVの開発を進めていく考えを示しました。

そうであれば、今日の新会社設立に向けた会見は、ソニーとホンダによる日本連合の誕生という明るいニュースの一方で、ホンダがソニーのモビリティの製造の担い手になるという見方もできるわけですね。

もともとソニーのモビリティの開発は、オーストリアの生産受託大手のマグナ・シュタイヤーが担っていました。マグナに生産受託するという手もあったわけですが、それがホンダになったということですね。

ソニーとホンダの日本連合は、日本の自動車産業およびソフト産業にとってもよかったといえるのではないでしょうか。

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