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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

人間支援ロボットはどこまで進化するか

今日は、産業ロボットではなく、
近年とみに進化の著しい
人間支援ロボットについて考察しました。

近年、ロボットやAI(人工知能)の市場は、
急速に熱を帯びています。
新たなロボット市場が、生まれつつあるといっていいでしょう。

経産省とNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)によれば、
国内のロボット市場は、2035年に9兆7000億円に達します。
うち、サービス分野のロボットは、4兆9000億円と、半分超です。
当然、ロボット市場は、国内にとどまらず、世界に広がりますから、
市場規模は、何倍にも膨らむと考えられます。

ソニーは1999年、ペット型ロボット「AIBO」、
ホンダは2000年、二足歩行ロボット「ASIMO」を発表するなど、
日本は、世界のロボット開発をリードしてきました。

このほか、病院で薬などを運ぶパナソニックの「ホスピー」、
プロペラで飛びながら不審者などを撮影する、セコムの監視ロボット、
トヨタのリハビリテーションを支援する「歩行練習アシスト」など、
物流、警備、清掃、介護分野などに広がっています。
ようやく、市場が形成されつつある印象ですね。

そこに、新たに今月5日登場したのが、ソフトバンクの
感情を認識する人型ロボット「Pepper(ペッパー)」です。
来年2月には、一般向けに市販される予定です。

開発したのは、ソフトバンクが2年前に出資した、
仏ベンチャー企業、アルデバラン・ロボティクス社。
生産するのは、iPhoneiPadEMS(受託製造サービス)で知られる、
台湾の鴻海精密工業グループです。

「ペッパー」は、インターネットを通じ、クラウドで情報処理をします。
「ペッパー」が普及すればするほど、
クラウド上には、「ペッパー」からのデータが収集される。
つまり、膨大な「ビッグデータ」が蓄積される仕掛けです。

じつは“ロボ・クラウド”といって、
世の中にある数々のロボットの経験から学習した知識を
クラウド・コンピューティングのもとで共有する計画まであります。
「ペッパー」も、そのようにして、どんどん賢くなっていくというのです。
通信技術の進化や、クラウドのサービスが普及したからこそ、
こうしたロボットビジネスモデルが成り立つわけですね。

ただ、いまのところ、
ロボットビジネスが育つには、長い時間がかかります。
実際、ソニーは「AIBO」を育てきれず、
2006
年に、ロボット事業を撤退しました。
ホンダ「ASIMO」は、市販の計画はありません。
「ペッパー」は、19万8000円と安価です。
決して高額ではありませんが、簡単に普及するとは思えません。
しかし、ソフトバンクは、長期的な視点のもと、「ペッパー」を育てていく方針です。
莫大な資金力があるからこそできるんですな。

ロボット・フィーバーは、日本だけではありません。
米シリコンバレーでも、ロボットやAIは、注目を集めています。
13年11月、グーグルは、
東京大学発のロボットベンチャー企業「シャフト」を買収し、
話題になりました。
グーグルは、シャフトのほか、
ロボットに関連企業7社を、続けざまに買収しています。
また、米フェイスブック、中国の百度(バイドゥ)をはじめ、
資金力のあるIT企業は、ベンチャー企業を買収するなどして、
ロボット事業に参入する例が、相次いでいます。

日本は、少子高齢化が深刻化するなか、
労働力不足を補うため、産業用のロボットや、
サービス用ロボットなどの活躍が期待されます。

日本が、世界のロボット市場において存在感を示し続け、
ロボット先進国の座を維持できるかどうかは、
長期的視点で、ロボット事業を育てられるかどうかにかかっていると思います。
ソニーのように、途中で放棄してはダメですよね。

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