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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

ネスレの「ソリュブル」コーヒー、消費者の判断は?

ネスレといえば、コーヒーの「ネスカフェ」ですよね。
日本国内では、いわゆるインスタントコーヒー市場の
7割のシェアをもつ、業界最大手です。
新聞報道によれば、そのネスレが、
業界団体の全日本コーヒー公正取引協議会、
一般社団法人全日本コーヒー協会、日本インスタントコーヒー協会、
日本珈琲輸入協会を退会します。
これはいったい、どういうことでしょうか。

ことの経緯は、こうです。
もともと、全日本コーヒー公正取引協議会は、コーヒーについて、
コーヒー豆から直接つくる「レギュラー」と、
抽出液を乾燥させてつくる「インスタント」の
どちらかの表示をするというルールをつくっています。

そのなかで、ネスレは、微粉砕したコーヒー豆を
抽出液と混ぜ、乾燥させるという方法でつくったコーヒーを、
「レギュラー」でも「インスタント」でもないとして、
「ソリュブル」という新ジャンルだと主張し、
2010年から、その表示を使ってきました。

ネスレは、昨年には、「さよなら、インスタント。」という
印象的なコピーの広告を打ちました。「脱・インスタント」を図ったのです。
主力商品の「ゴールドブレンド」などにおいても
「レギュラーソリュブルコーヒー」と表示をして販売しています。
じつは、私は、「ソリュブル」を愛飲しています。

当時もこのブログに少し書きましたが、
「インスタント」という表現は、やや古くさく、
安っぽいイメージの言葉になっていましたからね。
ネスレとしては、「ソリュブル」という新ジャンルによって、
いわば、市場創造を狙ったのでしょう。

しかし、業界団体は、これを受け入れませんでした。
「ソリュブル」の扱いに困った結果、
「基本的にはインスタントだ」という結論にいたりました。
「ソリュブル」について、名称としての使用はもちろん、
広告表現としての使用も「不当」という判断を下したのです。
わかりにくく、「消費者が誤認をきたす」というのが、業界団体のいい分です。
これに怒ったネスレは、業界団体の退会に到ったというわけです。

ネスレといえば、コーヒーに限らず、水やチョコレート菓子、
ペットフード、業務用製品など幅広く手掛ける、世界最大の食品メーカーです。
本社はスイスですが、世界中のほとんどの国や地域で事業を展開している。
グローバルな視点から見れば、日本の業界団体の了見の狭さに、
やきもきしたのかもしれません。

まあ、ネスレが業界団体を退会したからといって、
消費者が、ネスレの商品を買わなくなるとは思えませんよね。
業界団体がいうように、誤認をきたす消費者は、
いったいどれだけいるでしょうか。

消費者が求めているのは、よりおいしいとか、
より新しいといった商品の価値です。
ネスレと、業界団体のどちらが消費者目線なのかは、
今後、消費者が決めることだといえるでしょう。

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