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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

タブレットの本質は、“おもちゃ”である

IT専門の米調査会社IDCは、
2014年のタブレット端末の世界総出荷台数を
前年比6.5%増の2億3310万台と予測しました。
13年が前年比51.8%増の
1億9200万台だったことを考えると、
売れ行きに、急ブレーキがかかった印象です。

その背景として、「ファブレット」と呼ばれる、
タッチパネルのサイズが5.5~7インチの
大型スマホの台頭があげられています。
たしかに、私が愛用するサムスンの「ギャラクシー・ノートⅡ」は、
液晶パネルが5.5インチで、かなり大きい。
日経新聞や朝日新聞のアプリを読んでいると目が疲れますが、
すこしガマンすれば読めなくはない。
ファブレットさえあれば、タブレットいらずというわけですな。
ちなみに、14年のスマホの出荷台数は、前年比23.8%増の
12億5230万台といわれますから、
その勢いはなかなか止まりませんよ。

タブレットは発売当初から、
パソコン(大)とケータイ(小)のイイトコどりをした、
「中」間的なデバイスとして位置付けられてきました。
ノートPCは文書や画像の編集を行うことができるが、
重くて、持ち運びがたいへん。
一方、ケータイは携帯性に優れるが、
本格的なファイル編集ができず、仕事にはつかえない。
タブレットは、両者のメリットを兼ね備え、
デメリットを解消することで、売上を伸ばしてきました。
それなりに軽くて、それなりに仕事につかえるというわけですな。

その反面、メリットを中途半端にしか
発揮できなかったのも確かだと思います。
「イイトコどり」といえば聞こえはいいですが、
結局のところ、「どっちつかず」の
デバイスだったことは否定できませんよね。
スマホに呑み込まれるのも、故なきことではありません。

では、タブレットは、
このまま衰退を余儀なくされてしまうのでしょうか。
そんなことはないと思います。
タブレットにはタブレットにしかない、
独自の特徴があるからです。

それは、“おもちゃ”的な側面です。
たとえば、言葉もロクに話せない1歳や2歳そこらの子どもが
タブレットでゲームをしたり、
お絵かきを楽しんだりするのは、
それほど珍しい光景ではなくなりましたよね。
ああいうことが可能なのは、タブレットが、
おもちゃそのものだからだと思うんです。
いってみれば、現代版“マジックメモ”ですよ。

子どもは不器用ですから、ファブレットは小さくて自在に操作できない、
パソコンはキーボードの字が読めなくては操作できない……
この点、タブレットはサイズ感といい、
ユーザビリティといい、絶妙なんですよね。
老若男女が取扱説明書など全く読むことなしに、楽しむことができます。
仕事用のアプリを使っていても、
どこかしらゲームをやっているような感覚を抱くことが少なくないのも、
おもちゃ的な側面といっていいでしょう。

確かに、利便性や機能性をとってみれば、
タブレットはスマホやPCにかなわない部分があるのかもしれない。
しかし、タブレットには、
それを補って余りある遊び心があるのではないでしょうか。

考えてみれば、おもちゃや遊びから進化した技術は少なくありません。
先日のブログ(8月28日)で取り上げた「からくり」はもとより、
今流でいえば、小型無人ヘリ「ドローン」、ロボットなども、
もとをただせばおもちゃが起源ではないか――というのが私の考えです。
たかがおもちゃ、されどおもちゃですよ。

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