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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

「老人クラブ」は、なぜ衰退したのか

9月13日付の朝日新聞夕刊の1面に、
「老人クラブ、お年寄り増えても会員減」という記事がありました。
確かに、高齢化社会を迎えているにもかかわらず、
ヘンな話ですよね。なぜでしょうか。

65歳以上の人口は、この15年間で1000万人以上増えた一方、
「老人クラブ」の会員数は、減少の一途をたどっているというのですね。
公益財団法人全国老人クラブ連合会(全老連)によると、
「老人クラブ」の会員数は2013年3月現在約650万人で、
ピーク時を約240万人近く下回ったと書かれています。

まあ、「老人クラブ」といっても、
いまの若い人にはなじみがないでしょうな。
「老人クラブ」は、地域を基盤とする高齢者の自主的組織で、
その数は全国11万団体にのぼるといわれています。
会員はおおむね60歳以上の人々で、日常的に声をかけ合い、
歩いて集まることのできる、30名から100名の規模が基本。
活動内容は非常に幅広く、
日常の健康管理やシニアスポーツ、事故防止などの健康活動、
一人暮らしの高齢者を支える友愛活動や、
ボランティアなどの社会奉仕活動、
趣味・サークル活動や学習活動を展開しています。

例えば、昔は、老人会がバスを仕立てて、旅行をするとか、
観劇会を催すと聞きましたよね。
また、老人会に入ってないと、“入りませんか”と
勧誘があったりしたものですわね。

まあ、社会学的にいえば、個人・家庭と行政の間に入って、
高齢者一人ひとりの日常生活をサポートする、
ある種の「中間集団」といえるでしょうな。
ちなみに、「老人クラブ」は、
1963年施行の「老人福祉法」において、
「老人福祉の増進を目的とする事業」として位置付けられており、
国や地方自治体から補助金を受けています。

さて、本題に戻って、なぜ、
老人クラブの加入者は減少しているのでしょうか。
記事では、その背景として、
今日の60代の中には“現役”として活躍している人が少なくないこと。
インターネットの普及により、自らサークル活動や講座の情報を得て、
趣味や仲間づくりができるようになったこと。
地域とのかかわりを煩わしいと
考える人が増えたことなどが挙げられています。

間違ってはいないと思いますが、
ここでは、あえてひとこといわせていただきたい。
ズバリ、この分析には「高齢者視点」が
抜け落ちているのではないでしょうか。
つまり、高齢者にとって「老人クラブ」とはなにか。
当事者目線に沿った分析が欠けていると思います。
あり体にいえば、老人の気持ちがわかっちゃおらんのですな。

私は、「老人クラブ」の加入者が減ったのは、
単刀直入にいうと、ズバリ、
「老人クラブ」の魅力がなくなったからだと思います。
「老人クラブ」というネーミングのダサさもさることながら、
わざわざ年会費を払ってまで、
クラブに加入する理由がなくなりつつあるのではないでしょうかね。

例えば、介護が必要になった場合でも、
「老人クラブ」の助けを借りずとも、
デイサービスやデイケアセンターのバスが自宅まで迎えにきてくれます。
センターでは、リハビリのサポートを受けながら、
さまざまな人々と親睦を図ることができます。

また、地域の高齢者同士で親睦旅行に出かけなくとも、
昨今は、介護旅行サービスに力を入れる旅行代理店があります。
多少値は張りますが、トラベルヘルパーのサポートを受けながら、
気の合う仲間と気ままな旅を楽しみたいと考える向きが増えるのは、
いってみれば当たり前ですわ。
プロによる高齢者向けサービスが充実してきたいま、
老人クラブはなかなか太刀打ちできませんよ。

前出の全老連は、今後5年間で会員数100万人増を目ざし、
都道府県ごとに数値目標を割り振るとともに、
達成度合いを毎年公表する方針を打ち出していますが、
クラブ活動それ自体の魅力を高めることなしに、
この目標を達成するのは難しいでしょうな。
社会環境の変化とともに、「老人クラブ」にも
進化が求められているのは間違いないと思いますね。

もっといえば、今日の日本では、
子ども会や青年団、町内会、自治会など、
地域コミュニティに関わる組織の加入者が
減少し続けているといわれています。
その背景として、ライフスタイルの“個人化”など、
時代環境の変化が指摘されることが少なくありませんが、
私は、「老人クラブ」同様、
組織それ自体の魅力の低下を考える必要があると思います。
当事者視点に立って、もっともっと知恵をしぼって、
魅力ある「中間集団」の進化を図っていかなければ衰退する一方でしょう。

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