少し前の話になりますが、13日、トヨタとマツダは、環境技術や安全技術など幅広い分野で提携関係を強化すると発表しました。資本関係はないまま、幅広く提携するのは異例といえます。
この提携に関しては、日産CEO会長兼社長のカルロス・ゴーン氏も、同日に行われた日産の決算発表会の席上、「トヨタとマツダの提携強化は論理的」と語っていました。
トヨタ社長の豊田章男氏は、会見の席上、提携の理由について「中長期的な目線で、もっといいくるまをお互いにつくっていくため」と語りました。
提携強化の狙いは、ズバリ、オープン・イノベーションですね。
なぜ、オープン・イノベーションが求められるのか。
いまの自動車市場は、変化のスピードが速く、今後、どちらに進むのかも予測しづらい環境にあります。ガソリン車に加え、次世代自動車は、いまや、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、電気自動車、燃料電池車、ディーゼル車など、多岐に及びます。各社は、そのすべての領域を自社で開発しようとすると、資金、人材、時間などのリソースが分散してしまい、いくらあっても足りません。
したがって、社内だけでなく、外の企業や研究機関と組んで研究開発を進めることにより、短期間で高度な専門知識や技術を得て、次のステップへの飛躍が求められます。すなわち、オープン・イノベーションです。
トヨタは、FCVやハイブリッド車、プラグインハイブリッド車などの技術で、世界の先頭に立っています。反面、ディーゼルエンジンの分野では、フォルクスワーゲンなど欧州勢に出遅れています。
マツダは、FCVやハイブリッド車などモーターで走る車の技術に出遅れており、すでに、ハイブリッド技術に関しては、トヨタから技術供与を受けています。反面、「スカイアクティブ」と呼ばれる、独自の低燃費のクリーンディーゼルエンジンの技術は、トヨタにはない強みです。
つまり、2社が提携することで、互いの弱みを補填できます。
マツダ社長の小飼雅道氏は、「スカイアクティブのレベル向上を、トヨタと一緒に進めれば新しい価値を生み出せる」と語りました。逆もまた然り、でしょう。両社は、いま強みをもつ自社技術についても、提携によって、さらに強化できると期待しているわけです。
これは自動車メーカーに限った話ではありませんが、技術者というのは、とかく内向きになりがちです。トヨタのような大企業になると余計にそうです。トヨタは、組織の活性化により、イノベーションを起こす土壌をつくることも狙っているでしょうね。
それと、いきいきとした人材の養成ですよね。
まあ、提携したからといって、その後、成果を発揮することが約束されたわけではありません。オープン・イノベーションが実現するか否かは、両社がどこまで危機感を共有し、腹をくくって取り組むかにかかっているといっていいでしょう。