昨日の読売新聞の夕刊によると、シャープは、車載用の液晶に活路を見出そうとしています。そうなると、例えばトヨタと、車載用液晶パネルの共同開発をめざすというシナリオも考えられますね。
シャープは、14年3月期、アップルや中国シャオミ(小米科技)向け中小型液晶パネルの販売が好調で、黒字を確保しました。
しかし、15年3月期は、ソニー、東芝、日立の液晶パネル部門を統合して設立されたジャパンディスプレイにシャオミの受注を奪われ、黒字予想が一転、最終赤字に陥りました。
ジャパンディスプレイだけではありません。中小型液晶パネルは、韓国のLGディスプレイに加え、中国や台湾の新興メーカーも技術力を磨き、追い上げています。
厳しい市場環境のなかで、シャープが生き残りの道を見出したのが、車載分野です。
なぜ、車載なのか。
じつは、パナソニックにしろ、ソニーにしろ、電機メーカーは一斉に車載分野に進出しています。というのは、自動車のスマート化、IT化が急速に進んでいます。したがって、自動車向けの液晶の市場規模は、今後、拡大が見込まれています。また、中小型パネルは需要が変動しがちなのに比べて、車載用は、一度採用が決まれば、安定して長期的な受注が見込めるからですね。
幸い、シャープは、車載用にふさわしいパネルの技術をもっています。昨年6月に発表した、「FFD(フリーフォームディスプレイ)」が、それです。
当時、このブログにも書きましたが、「FFD」は、従来、液晶には欠かせなかった額縁が必要なく、曲げたり、丸くしたり、画面上に穴をあけたり、自由自在に使える画期的なパネルです。シャープは当初から、「FFD」の用途として、車載をねらっていました。
「FFD」を使えば、例えば、スピードメーターをディスプレイに埋め込んだインパネなど、斬新なデザインが可能です。運転していないときに、スピードメーターの部分に映像を映すなどの使い方も考えられます。
当時から、国内外約10社の自動車メーカーと交渉を行っているとされていました。例えば、その一社がトヨタであれば、シャープの再生シナリオも一歩前へ進むことになるでしょう。
シャープはいま、存続の危機にあります。しかし、日本としては、高い技術をもつシャープを、簡単につぶすわけにはいきません。もしつぶれてしまえば、貴重な技術が国外に流出するのは避けられませんからね。
シャープが、いや、日本が世界最先端の液晶技術をもち続けるには、車載用のパネルで成功する以外に、道は残されていないのではないでしょうか。