トヨタは、17日初の外国人副社長のディティエ・ルロワさんの記者懇談会を開きました。日本のマスコミには、初の登場です。
これまた初の女性常務役員で、渉外・広報本部副本部長でもあるジュリー・ハンプさんが、記者懇談会の冒頭、ルロワさんを紹介しました。いずれも、通訳入りの会見です。いよいよトヨタも、グローバル企業になったか……と印象付けましたね。
ルロワさんは、フランス出身で、82年にルノーに入社後、ドゥエ工場工場長、ルマン工場副工場長を経て、98年にトヨタモーターマニュファクチャリングフランスに入社し、工場の立ち上げを成功させます。そして、05年に同社社長、07年にトヨタ本体の常務役員に就任。10年にはトヨタモーターヨーロッパ取締役社長兼CEOに就任し、赤字を垂れ流していたトヨタヨーロッパを黒字化しました。12年にトヨタ本体の専務役員を経て、今年4月、第1トヨタプレジデントとなり、6月にトヨタ副社長に就任したというわけです。
トヨタの中で、順調に実績を重ねてきた人物といえるでしょう。
ルロワさんは、こんな話をしていました。82年にルノーでエンジニアとしてスタートしましたが、働き始めた際、通常のエンジニアの場合、3週間から4週間の現場経験を積むのに対して、20か月の工場勤務を行いました。現場で、2年近く工員たちと一緒に働くなかで、現場への理解や信頼を深め、それが自らのマネジメントを変えました。つまり、フランス人には珍しく、現場を大事にするというわけですね。
トヨタへの転職を決めたのも、トヨタが、現場への熱意をもち、「現地・現物」を重視する企業だったからだと語りました。
ルロワさんはまた、副社長就任にあたって、社長の豊田章男さんから、次のようにいわれたといいます。
「一つお願いがある。副社長になったからといって、変わらないでほしい」
ルロワさんは、これは、思ったことを率直に口にする人間のままでいてほしい、上司を気にするような発言をしないでほしい、という意味だと解説しました。
この一言をもってして、章男さんがルロワさんに何を期待しているかがわかりますね。トヨタの企業風土に“風穴”を開けたいんですね。
むろん、外国人副社長が誕生したからといって、トヨタがただちにグローバル企業になれるというわけではありません。むろん、彼は、グローバル化の「かざり」でもありません。
その証拠に、ルロワさんは、副社長であると同時に、日米欧を統括する第1トヨタのプレジデントです。
つまり、もっとも重要ともいえる日本の市場の責任者なのです。これは驚きですよね。彼は、ディラー回りをして、日本市場の特色について、リサーチしているという話をしていました。これは、日本の営業現場にショックを与える効果もあるのではないでしょうかね。
いずれにしろ、日本を代表する企業トヨタの副社長に、外国人が起用されることの意味は、小さくないと思いますね。
トヨタが変われば、日本企業も変わります。
そう考えると、ルロワさんの役割は大きいと思います。あえていうなら、例えばさらなる女性役員の登用が求められると思いますね。とりわけ、日本人女性の。かりにも、トヨタに女性副社長が誕生すれば、日本企業の役員風景は、少しは変わるのではないでしょうかね。