サントリービールは8日、新商品「ザ・モルツ」を発売しました。背景には、早ければ16年を目途に実施される酒税改正をにらんだ販売競争があるようですね。
ビール系飲料にかかる酒税の税額は、麦芽比率によって、350ミリ缶の場合、ビールが77円、「発泡酒」が47円、「第3のビール」が28円です。財務省は、税収規模が変わらない水準の55円を目安に、税額を一本化したいと考えているようです。
税額が55円で統一されれば、ビールは小売価格が下がり、「発泡酒」「第3のビール」は値上がりする可能性がある。つまり、“本物”のビールに移る消費者が増えることが考えられますね。
ここ数年、ビールメーカー各社は、「発泡酒」や「第3のビール」をめぐって、激しい開発競争、販売競争を繰り広げてきました。酒税改正により、次は何が競争の焦点になるのか。ズバリ、“本物”のビールをめぐる競争でしょうか。
サントリービールが、スタンダード(中価格帯)ビール「ザ・モルツ」を新しく投入した背景が、ここにあるのではないでしょうか。サントリーは、「ザ・モルツ」を、苦みとコク、ほのかな甘みの理想的なバランスを生かした「ニュー・スタンダードビール」と位置づけています。
銅色のパッケージは、これまでのビールのイメージを変えるような思い切ったデザインです。
「ザ・モルツ」のCMにEXILEを起用し、「ドライに生きてて楽しい?」と語りかけていることからもわかるように、アサヒ「スーパードライ」を意識していることは明らかですね。
サントリーは現在、ビール類全体のシェアが15%で3位。「発泡酒」「第3のビール」を除いたビールに限れば、11%で4位。「ザ・モルツ」をテコに、サントリーがどこまでシェアを増やせるか。一気に2位に躍り出る可能性はあるのか、ないのか。
サントリーは、63年にビール事業に本格参入、08年12月期に悲願の黒字化を達成しました。人口減や若者のビール離れで、ビール市場が縮小傾向にあるなか、「ザ・モルツ」はサントリーのビール事業に新たな記録を残すことになるのか。“ビール戦争”はこの秋、いよいよ本番を迎えます。