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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

東芝の“ナゾ”に見る“闇”の深さ

報道によると、東芝の原子力事業子会社であるWH(ウエスチングハウス)は、2012年度~13年度に、計13億ドル(約1600億円)の減損損失を計上していた。寝耳に水の話です。「隠していた」といわれても弁解できない話ですね。

これまで東芝は、記者会見で原子力事業について質問されると、決まって「好調に進展している」と述べてきました。だから、東芝本体は、WHの「のれん代」の償却には手を付ける必要はないという理屈です。
しかし、これだけWHが赤字を出していたとなると、「のれん代」を償却しない理由が成り立たなくなります。かりに「のれん代」を償却するとなれば、1000億円単位の減損が必要です。
まだまだ、東芝の不正会計問題の“闇”は続きそうです。

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※東芝社長の室町正志氏

東芝には、いまだ“ナゾ”、すなわち不透明なことが多いんですね。
東芝は、11月7日、「役員責任調査委員会」による調査報告書を公表し、この報告書に基づいて旧経営陣5人を提訴。総額3億円の損害賠償を求める訴訟を起こしています。
しかし、この訴訟自体、個人株主が賠償請求を要求したために東芝が動いたものです。
提訴された5人には、旧経営陣でもあった現社長の室町正志氏は含まれません。会長まで務めた室町氏になぜ、責任がないのか。
さらに、総額3億円という額の根拠も不透明です。役員責任調査報告書では、「個人的利益を図ったものでも、会社に特別な損害を加えようとしたものでもない」とされていますが、オリンパスの粉飾決算では、19人に36億円が求められたことからしても、人数、額ともに少ない印象ですよね。

そもそも、役員責任調査報告書は、いまだに「不正会計」ではなく「不適切会計」という表現を使っているのも不自然といっていいでしょう。誰がどう見ても「不正会計」ですよ。誰がどこでどのように動かしているのか、じつに不透明でわかりません。

東芝の経営陣は、9月の臨時株主総会を経て、経営体制が刷新されました。
7月末に設置された「経営刷新委員会」は、経営陣が一新されたので解散かと思われました。ところが、その後も続けるという話でした。なるほど、経営刷新の旗を降ろさないのだと思っていたところ、もれ聞くところによると、いまや形骸化しているとか。

東芝は、原子力や電力をはじめ社会インフラを担う、いわば、つぶすことができない企業です。つまり、“Too Big”というわけです。それに、東芝は、こと技術力については日本のなかで超有数の企業です。それこそ、わが国の原子力や防衛産業を支えていますよね。
だから、巷間、東芝は簡単につぶせないといわれていますよね。かりにも、いまなお、それにあぐらをかいているとしたら、もはや何をかいわんやです。

東芝の“闇”は、想像以上に深い。
完全復活までに、相当な時間がかかることは、間違いないでしょう。

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