自動運転車がいよいよ現実味を帯びるなかで、ドイツの自動車部品大手ボッシュが、日本に熱い視線を注いでいます。
「日本は、自動運転技術の開発において、ボッシュの重要な舞台になると考えています」
ボッシュ取締役会メンバーのマルクス・ハイン氏は、昨年の第44回東京モーターショーの会場で、そのように述べました。
ボッシュは、2013年初めから、ドイツの高速道路とアメリカの州間高速道路でテスト車両による公道試験を実施してきました。それに続き、日本でも15年10月から自動運転車の公道試験を開始しているんですね。
なぜ、ドイツのボッシュが日本で自動運転車を走らせるのか。そこには、自動運転という自動車産業にとっての一大テーマを機に、日系自動車メーカーへの供給を一気に高めたいとする、ボッシュの巧みな戦略があると見ていいでしょう。
ボッシュが自動運転車の走行試験を行っているのは、栃木県・塩原高原と北海道・女満別の自社のテストコースのほか、東北自動車道と圏央道です。
「日本では道路条件や交通条件が異なります。そのため、現地におけるシステムの適切な調整とカスタマイズが必要になるんですね」
と、ハイン氏は東京モーターショーの会場で語りました。
日本は左側通行で、交通状況も複雑です。高齢化の進展により、道路交通のさらなる安全性の向上も求められています。
ボッシュは、日本の特殊な道路環境で公道試験を積み重ねることにより、日本の道路事情に合うセンサーやブレーキ、ステアリングなどのアクチュエーターの開発に生かそうとしているわけです。
「いずれ、日本はドイツ、アメリカに次ぐ自動運転における第三の開発拠点になるだろう」というのは、ハイン氏のコメントです。
ボッシュは、パワートレーン、ブレーキ、ステアリングのほか、センサー、ナビゲーションシステムなど、自動運転に必要なすべての技術を保有しているといっても過言ではありません。
また、全世界のボッシュの従業員37万5000人のうち、エンジニアは5万5000人。現在、約2500人のエンジニアが運転支援システムと自動運転の開発に携わっています。
日本政府は、2020年の東京オリンピックの会期中、東京で自動運転車両による自律走行を実施する計画ですが、ボッシュもまた、足並みをそろえるかのように、2020年に向けて、自動運転を可能にする技術の開発を進めているんですね。
ボッシュが日本の自動車メーカーへの供給を高めれば、当然、デンソーなど日系部品メーカーとの競争は激しくなることが予想されます。
果たして、東京オリンピックで披露される自動運転車にどれだけボッシュの技術が搭載されることになるのか。ボッシュの本気度が伝わってくるだけに、その動向には目が離せませんね。