Loading...

経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

ヤマダ電機が打ちだした、次の一手とは

今日は、ヤマダ電機の“変身”について書いてみたいと思います。

家電量販店最大手のヤマダ電機が、新たな戦略を打ちだしています。出店攻勢で売り上げ拡大を追い求めてきたヤマダ電機に、いったい何が起きているのでしょうか。

ヤマダ電機はグループ全体で国内950店を展開、年間売上高は約1.6兆円です。これまで年間、約40店のペースで出店を続けてきましたが、市場の縮小で赤字店舗が続出、2015年に郊外の不採算店約60店の閉鎖に踏み切りました。

拡大路線からの転換を余儀なくされるなか、ヤマダ電機が打ちだしたのが、じつは中古家電販売への挑戦なんですね。中古家電の再販店舗を今後2年程度で現在の15店から3倍の50店にすると発表しました。

ヤマダ電機の中古家電販売への本格参入の背景には、これまでの大量仕入れ、大量販売モデルの限界があると見ていいでしょう。

家電量販店はこれまで、家電メーカーが次々と開発する新商品によって伸びてきました。ところが、今日、量販店に足を運んでも、ほしいと思える商品はなかなかない。また、品定めに来店しても、実際はネット通販で購入する消費者が増えています。

それに、家電製品の基本機能はいまや横並びです。基本機能があれば十分、安ければなおいい、と考える消費者は少なくありません。

もはや、最新家電を販売するだけでは量販店の将来はない。そこで、ヤマダ電機が着目したのが、中古家電販売という新たな戦略というわけです。

消費者側の変化も見逃せません。高度成長期の庶民の夢は、ピカピカの冷蔵庫、洗濯機、白黒テレビの三種の神器を所有することでした。しかし、いまは違います。

洋服にしても家具にしても、中古品で十分と考える消費者が少なくない。日本リユース業協会によると、中古品を売る、買うといったリユースの市場規模は、1兆4900億円(自動車とバイクを除く)にのぼるといいます。

なぜ、中古品市場が盛り上がるのか。背景には、過去20年にわたるデフレで身についた消費行動があります。型落ち品や中古品でいいから一円でも安く手に入れたい、極力、ムダな出費を抑えたいという心理です。デフレの産物ですね。

また、ネットオークションが身近になり、中古品への抵抗感は薄れています。むしろ、リサイクルはエコ、古着はカッコいいというのが、いまの風潮です。

つまり、中古品市場は今後、ますます成長する。そこに大きな商機があると、ヤマダ電機は見抜いたんですね。「お客様目線」「川下発想」のヤマダ電機ならではの着眼点です。

問題は、ヤマダ電機が、中古家電の販売を新たな収益の柱に育てていけるどうかですね。

カギを握るのは、傘下の廃棄家電処理業者シー・アイ・シーです。白物家電はもともと粗利益率の高い商品といわれますが、中古家電を安く買い取り、自社工場でメンテナンスをして付加価値をつけ、新品のおよそ半値以下で売れば、さらに粗利益率は高まります。

メンテナンス拠点には、全国のヤマダ電機の店舗を通して、一日400台の中古家電が入ってくるといいます。洗濯機は、分解して内部を高圧洗浄機で洗浄します。洗浄には1台につき、約1時間かけるそうです。

外観チェックや動作確認など、品目ごとに設定された24の検査を経て、社内の基準を満たしたものだけが中古家電として店頭に並べられます。その数は、1か月に1万台にのぼります。

中古家電には、ちゃんと動くのだろうかという不安がつきものですが、ヤマダ電機の自社工場がメンテナンスしたとなれば、そうした不安は払しょくされますわね。量販店最大手の信頼とブランド力がものをいうわけです。

加えて、中古品の下取りを強化すれば、新品に買い替えたい消費者を呼び込むことができるでしょうから、量販店が中古品を取り扱うことは、一石二鳥ですよね。

中古家電販売と聞くと、一見、地味なイメージですが、最大手のヤマダ電機が手がけることの意味は小さくありません。規模の大きさを強みに、中古家電の一大販売市場を牛耳ることも夢ではないからです。

拡大路線に黄信号が灯ったとはいえ、家電量販店トップのヤマダ電機の快走は、まだまだ続くと見ていいのではないでしょうか。

ページトップへ