これは、キヤノンにとってホームランではないでしょうか。
キヤノンは、東芝の医療機器子会社、東芝メディカルシステムズを買収する見通しです。買収額は7000億円で、3月18日までに最終合意を目指します。7000億円というのは、M&Aの規模としては、とてつもなく巨額ですね。
キヤノンは中長期経営計画「グローバル優良企業グループ経営構想」のフェーズV(2016~2020)で、連結売上高5兆円以上、営業利益率15%以上、純利益率10%以上を目標に掲げています。
ところが、キヤノンの連結売上高は、14年12月期3兆7272億円、15年12月期3兆8002億円と横ばいです。
キヤノンの売上げの柱は、デジタルカメラ事業と複合機事業の2つですが、市場の成熟を受けて、どちらも売上げが頭打ちなんですね。連結売上高5兆円を目指すには、打開策が求められていました。
東芝メディカルの買収は、停滞を打開するチャンスです。しかも、医療分野は、成長市場です。医療機器事業を第3の柱に位置づければ、一気に売り上げを拡大することができます。二度とないチャンスといっていいでしょうね。代表取締役社長の御手洗冨士夫さんは、乾坤一擲の大勝負をかけたわけですよね。
東芝メディカルは、コンピュータ断層撮影装置(CT)の国内首位メーカーです。キヤノンはこれまでカメラ事業で培ったイメージング技術を応用して、デジタルX線画像診断装置や眼科診断機器などを手掛けてきました。つまり、シナジー効果に期待が持てます。
また、東芝メディカルの画像診断装置は、米GE、独シーメンス、蘭フィリップスの世界3強の一角に食い込む実力があります。つまり、東芝メディカル買収によって、キヤノンは一気に世界の医療機器大手と闘えるだけの実力を備えることになります。
じつは、キヤノンの創業者で初代社長の御手洗毅氏は、産婦人科医として御手洗産婦人科病院を開業していました。キヤノンはもともと医療とは深い縁があったわけで、医療とキヤノンは親和性が高いといえます。
キヤノンは3月30日に開かれる株主総会後に行われる取締役会で、真栄田雅也(まえだまさや)氏が代表取締役社長COOに就任する見込みとなっています。
「新たな5か年計画のスタートとなる2016年に、社長交代を決意しました」
と、御手洗さんは、1月27日に開かれた社長交代会見の席上、述べました。つまり、東芝メディカルの買収は、新社長への置き土産ということになりますね。
真栄田さんにとっては、ひとまず幸先のいいスタートというか、成長に向かって第一歩を踏み出すことができるのではないでしょうかね。