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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

日立とホンダのアルコール検知器の課題

私はかねてから、自動運転も大事だけれど、これだけセンサー技術など進歩するなかで、なぜ、悲惨な酔っ払い事故を撲滅する“飲酒運転防止”ができないのか。自動車メーカーの怠慢ではないかと思っていました。
日立とホンダは今日、スマートキー対応のポータブル呼気アルコール検知器の試作を発表しました。やっとですよね。

自動運転技術をはじめ、自動車技術は日進月歩です。しかし、飲酒運転による事故はいまだなくならず、日本では死亡事故の約1割、米国では同4割近くが飲酒がらみです。
同じ「事故防止」が目的なら、自動運転より飲酒運転対策が先決、という論もあります。

今回発表された試作品は、従来、精度の高い検知器に多い「マウスピース」はありません。排気用のファンもチャンバー(呼気をためる容器)もない。携帯電話ほどのサイズです。
計測にかかる時間は、約3秒。いつでも、どこでも、素早く、息をはきかけるだけで呼気のアルコール分を検知できます。
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※アルコール分を検知すると赤いランプが点灯する

さらに、水蒸気センサーによって人の呼気であることを判断するほか、エタノール、アセトアルデヒド、水素を測定することで、エタノール濃度検出精度を高めたんですね。

スマートキーに対応しているため、呼気からアルコール分を検出すると、エンジンを始動させないアルコール・インターロックの役割を果たします。
従来のアルコール・インターロックは、大型の検知器を車内に設置するタイプでした。日立製作所研究開発グループ基礎研究センタ主任研究員の山田益義さんは、「開発のポイントになったのは、小型化です。どうすれば小型化できるのか、原理の検討まで戻って行い、ここまできました」とコメントしました。
従来品との違いを一言でいえば、小型化と高精度を両立したということでしょうかね。

デモンストレーションでは、呼気からアルコール分を検知した検知器をコンソールに置くと、「飲酒しています。しばらくしてから再計測してください」と音声が流れ、モニターに文字が表示されましたよ。
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※コンソールに置くだけでインターロック機能が作動する

日立は、もともと計測技術を得意とします。今回の呼気アルコール検知器は、排ガスモニターなどの技術を応用しており、2009年から開発を行ってきました。
ホンダもまた、自動車メーカーとして飲酒運転対策の研究を行ってきました。
本田技術研究所四輪R&Dセンター研究員の金圭勇さんによると、「ホンダ独自のより一般ユーザー視点に立った、利便性の高いアルコール検知器を開発できないか開発を続けて参りました」とのことです。
ホンダから日立に協力を求め、12年から共同研究を行ってきたんですね。

もっとも、飲酒していない人が呼気を測ってエンジンをかけ、飲酒した人が運転する事態は防げません。すでにかかっているエンジンを止めることはできませんから、共犯者がいる場合、飲酒運転は防げません。
今後、実証実験でデータを収集するほか、さらなる小型化や機能改善に取り組むという話です。

また、実用化の時期、運用方法なども、残念ながら検討課題としました。
例えば、コストを誰が負担するのか、誰がどのように運用するのかなどは、具体的には決まっていないんですね。アルコール・インターロックの実用化は、自動運転と同様、社会のコンセンサスをいかに築いていくかが、今後のいちばんの課題といえるのではないでしょうかね。

 

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