セブン&アイの代表取締役会長兼CEOの鈴木敏文さんの引退表明をめぐって、波紋が広がっています。
鈴木さんは、先週も書いた通り、コンビニエンスストアのビジネスモデルを一代で築き上げたカリスマであり、小売業界のカミサマだったのは、間違いありません。
社内外に、信奉者も多かった。コンビニ以外にも、現セブン銀行を設立したり、米セブン-イレブンを買収するなど、経営者としてきわめて優れた手腕の持ち主ですね。
しかし、上場企業である以上、カリスマであろうと、カミサマであろうと、現代は、コーポレート・ガバナンスの透明性は必須です。
その点、好業績のセブン―イレブン・ジャパンのトップ、井坂隆一さんを交代させるという今回の人事案は、不透明でした。
鈴木さんは、井坂さんは「新しいことを生み出していない」と批判しましたが、それだけでは説明責任を果たしているとはいえませんよね。数字の結果は出ているわけですからね。
先週も触れた通り、指名・報酬委員会の議論では結論が出ないまま、その人事案を取締役会に諮った。これも、コーポレート・ガバナンスの在り方に反します。カリスマだからといって、許されない。
指名・報酬委員会は、そもそも、意志決定の客観性や透明性を確保するため、社外からの視点を取り入れるためのものです。
それを、トップが独断で軽視するようでは、ガバナンスが機能しているとはいえません。
ほかにも、鈴木さん本人は、会見ではっきりと否定しましたが、次男の鈴木康弘氏を後継者にしようとしていると、あちこちから指摘されています。
康弘氏は、大きな功績は出さないまま、15年5月にセブン&アイ本体の取締役と同時に、CIO(最高情報責任者)に就任したといわれています。手掛けていたネット事業は、5期連続赤字だったため、人事の不透明性が指摘されているんですね。
米投資ファンドの“モノいう株主”サード・ポイントも、血縁による人事を否定する書簡を送っていますよね。
「老害」とは、いいたくありません。しかし、一時代を担った日本企業の経営のあり方が、転換する時期を迎えていることは、確かでしょうね。
先般の大塚家具の親子の内紛、東芝やシャープの経営陣の内紛、また、タカタ問題の内幕にあるといわれる内紛などは、旧世代の経営者が、新しい時代のガバナンスに適応できないために生じているといえるでしょう。
グローバル市場のなかで、日本企業にも、グローバルスタンダードなガバナンスが求められているのは間違いありませんね。
鈴木さんは、「小売業は変化対応業」と名言をはいています。
“社長業も変化対応業”ではないでしょうかね。