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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

パナソニックのロボットは成功するか

パナソニックは、25日、「社会に貢献するロボット技術~インフラ点検ロボット」として、ダム水中点検ロボットシステムの技術セミナーを開催しました。

「高齢化が進んで労働力が不足してくることで、ロボティクスが注目を集めています」
冒頭、パナソニック生産技術本部ロボティクス推進室室長の本間義康さんは、そう説明しました。ほかにも、人間にとって負担やリスクの大きい仕事の代替、人的ミスの削減、作業効率の向上、人件費の圧縮など、ロボットの導入にはさまざまなメリットがありますよね。
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※パナソニック生産技術本部ロボティクス推進室室長の本間義康さん

従来のロボット市場は、工場の組立ラインなどに用いられる産業用ロボットが主力でした。これら第二次産業用のロボットの国内市場は、18年に1兆円、24年に約1.5倍の約1.5兆円に成長するとされています。
一方で、第一次産業の農業関連ロボットの国内市場は、18年の約500億円が、24年には約5倍、また、サービスや物流など第三次産業のロボットの国内市場は、同約2500億円が、24年に約7倍と、いずれも産業用ロボット以上の高い成長率が予想されています。

第二次産業は、国内の大規模な新工場の建設はあまり期待できないため、ロボット関連市場もそれほど成長しない。一方、農業に加え、介護や物流など、人手の足りない第一次産業や第三次産業は、ロボットのニーズも増えると期待できるんですね。
パナソニックのロボットといえば、これまでレーザー溶接システムや組立の自動化を担うパラレルリンクなど、第二次産業向けが主力でしたが、今後、トマト収穫ロボットや搬送ロボットなど、第一次、第三次産業向けのロボットの開発にも力を入れていくというわけです。

パナソニックの生産技術本部のロボティクス推進室では、足(移動技術)、脳(人工知能)、目(計測認識)、手(マニピュレーション)の4つの要素技術に加え、安全技術などの開発を行っています。事業化が見えてくると、各カンパニーの技術者との開発が必要になってきますが、今回の水中ダム点検ロボットでいえば、AVCネットワークス社です。
P5255200※ダム水中点検ロボットの説明をするAVCネットワークス社事業開発センター先行開発部長の九郎丸俊一さん

今回の水中ダム点検ロボットは、河川やダムの水中箇所を効率的に点検し、全体図を把握できます。インフラの老朽化が指摘されていますが、ダムも例外ではありません。水深の深い部分のキズや割れ目の点検は、ダイバーに危険が伴います。しかも、画像が安定せず、位置精度も悪い。
その点、ロボットは、人より効率よく、安全に、位置を正確に把握しながら、鮮明な画像を記録し、解析することができます。

このダム水中点検ロボットには、車載用などに使われるセンサー、セキュリティ監視カメラ用のカメラ、電動自転車の電池、さらに平面を広く均等に照らすライティング技術など、パナソニックがこれまでに培ってきたさまざまな技術が横展開されています。
「パナソニックがもつ、いろんなデバイスや信号処理技術を、すごくいかせる分野だというふうに考えました」とは、AVCネットワークス社事業開発センター先行開発部長の九郎丸俊一さんの言葉です。パナソニックだからこそつくれるロボットというわけですね。

もっとも本間さんは、次のように話しました。
「ロボティクスの4つの要素技術を、必ずしも自前で全部やるとは思っていません。他社と組むことを模索しながら、最終の商材になったときにいちばんいい形が出せるように取り組んでいます」
パナソニックがロボットで成功するためには、独自技術の開発と同時に、それをうまく生かすために、外部とうまく連携していくことではないでしょうかね。

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