日産自動車がカルソニックカンセイの全株式の売却を検討していることが明らかになった、と日本経済新聞が24日付の朝刊トップで報じました。
振り返ってみれば、2兆円という膨大な有利子負債を抱え、経営難に陥っていた日産自動車に1999年、カルロス・ゴーンさんがトップとして送り込まれ、工場などの生産拠点の閉鎖、資産の売却、人員削減など、いわゆる「ゴーン革命」を断行しました。
※日産CEOのカルロス・ゴーン氏
なかでも注目を集めたのが、1145社あった部品や部材のサプライヤーを600社以下に削減したことです。
厳しい決断は、ゴーンさんが外国人だからできたのか。それもあると思いますが、ゴーンさんが「プロの経営者」だからこそ、踏み切れたのではないでしょうか。
カルソニックカンセイの全株式の売却の検討についても、同じことがいえそうです。
カルソニックカンセイは、熱交換器やマフラー、エアコンなどを主力とする部品メーカーです。日産はカルソニックカンセイの約41%の株式を保有し、カルソニックカンセイは日産との取引が全体の8割を占めます。
例えば、日産追浜工場のコックピットモジュール生産工程には、カルソニックカンセイのサブラインがあります。日産とは別の帽子を被ったカルソニックカンセイの従業員が、組み立てラインに並行してつくられたサブラインで、モジュールの組み立て作業を行っているんですね。
サブラインを機能させるには、サプライヤーが日産のモノづくりの考え方を深く理解する必要があります。そのため、カルソニックカンセイの従業員は、「CKPS構築活動」を通して、日産生産方式を学んでいます。
つまり、日産とカルソニックカンセイは、それほどまでに深い関係性でした。しかし、ゴーンさんは、そのカルソニックカンセイの株式を売却し、資金を先端技術の研究開発に振り向ける決意をしました。
注目したいのは、日産のカルソニックカンセイの株式売却によって、「系列」取引の見直しの動きが引き起こされるかもしれないことです。
日本の自動車産業が、完成車メーカーと部品メーカーとの長期安定的な「系列」関係のもとに発展したのは、よく知られる事実です。ところが、部品のモジュール化などが進むなかで、「系列」は必ずしも合理的な仕組みではなくなっています。
東日本大震災によるサプライチェーンの寸断から、「系列」取引を見直すべきだという声もあがっています。
IoT(インダストリアル・インターネット)によって製造業のあり方が根底から変わろうとしていますが、現状では、「系列」外の企業とつながることがむずかしいため、日本の製造業がIoTの流れから取り残される可能性が指摘されています。
すでにサプライヤーは「系列」に依存しない、新たな成長路線を探っています。厳しい自動車産業の中で生き残ってきたサプライヤーには、その力があります。
かりにも、ゴーンさんが「系列」崩しの引き金を引いたとすると、当面は激震が走ることでしょうが、長い目で見れば、サプライヤーの成長を後押しすることになるのではないか。いや、そうならなければいけないと思いますね。