スポーツ選手と一般の人とでは、脳の働きにどんな違いがあるのか。NTTは、「スポーツで勝てる脳」のメカニズムを研究しています。
NTTは6月2日、3日に京都府で一般公開する最新のR&D成果「オープンハウス2016」に先立って、東京都内で30日、AIに関連する7つの技術を公開しました。その一つが、「スポーツで勝てる脳をつくる」研究です。
「野球ではよく、“球をよく見て打て”といいますが、そもそも時速150キロの球を見てから打ったのでは、絶対に間に合いません」
とは、NTTコミュニケーション科学基礎研究所 上席特別研究員 人間情報研究部部長の柏野牧夫さんのコメントです。
では、飛んでくるボールに打者はどのように反応しているのか。カギを握るのは、意識に上らない、瞬時の脳情報処理だというのです。
「プロに、“なんで反応しているの?”と聞いても、答えられないはずです」
と、柏野さんは語りました。
会場では、VR(バーチャルリアリティ)技術とウェアラブルセンサーの組み合わせによって、バッティング時の潜在的脳情報処理のメカニズムを解明する実験システムが紹介されていました。
打者は、どの時点の、どんな情報に基づいて、投球の軌道を予測したり、打つ、打たないの意思決定をしているのか。打つ、打たないの意思決定に、情動(恐怖)や履歴(配球)はどう影響するのか。
研究チームは、それらの科学的な解明に取り組んでいます。
「このほか、口では説明できない名人の技についても、意識できていないプロセスを科学的に解明することができます」
と、柏野さんは述べます。
製造現場では、勘やコツ、経験などがものをいう「匠の技」をいかに伝承していくかが大きな課題ですよね。
野球選手の巧みな動作の解析と同様に、「匠の技」を解析すれば、熟練作業者の技を自然と身につけることが可能だというんですね。
「技能のコツの習得を手助けすることは、すでに考えています」
と、柏野さんは語りました。
NTTは200~300人規模でのAI開発を強化、複数の研究所でのAI関連研究を「corevo(コレボ)」という統一ブランドにまとめ、今後、他社との協業も積極的に進める計画です。
急速に注目を集めるAI技術において、NTTグループがどのような成果を出していくのか、世界をリードしていけるのか。成果を待ちたいですね。