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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

ホンダHV向けの“新磁石”

日本は小資源国です。なかでも、近年、自動車メーカー、テレビやLED関連の商品を生産する家電メーカーなどは、レアアースの安定確保には苦労してきました。しかし、ホンダから朗報がもたらされました。

やや旧聞に属しますが、今月12日、ホンダと大同特殊鋼は、「重希土類」を使わない磁石を採用したハイブリッド車用のモーターを開発したと発表しました。今年秋に発表予定の「フリード ハイブリッド」に搭載されます。実用化されるのは世界初です。

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※ホンダのハイブリッドシステムi-DCD用モーターのローター。右上の黒いV字に見える部分が重希土類未使用の磁石
「重希土類」とは、いわゆるレアアースです。レアアースには、「軽希土類」と「重希土類」があり、ともに産地は限られます。
2011年には、レアアースの価格が大暴騰し、騒動になりました。とくに「重希土類」は中国でしかとれませんからね。

現在は、価格は落ち着き、中国の輸出規制も撤廃されていますが、なにぶん、中国の政策は読めません。
しかも、レアアースは、基本的に高い。
資源リスク回避すなわち安定調達、コスト削減、資源開発に伴う環境問題への配慮などの面からも、「重希土類」の使用料を減らす、もしくは未使用とすることは、メーカーにとって重要な課題なんですね。

今回の技術について、ざっくりと説明してみましょう。

まず、通常、電動車両に搭載されているモーターには、世界最強の磁力をもつ「ネオジム磁石」が使用されています。ネオジム磁石は、鉄や、軽希土類であるネオジムなどからできていますが、ハイブリッド車などで使うためには、200度の高温に耐えられる耐熱性が求められます。耐熱性を補う目的で、問題の「重希土類」のジスプロシウムやテルビウムが添加されているんですね。

従来、ネオジム磁石は焼結工法、すなわち焼き固めてつくられます。しかし、大同特殊鋼は、国内で唯一「熱間加工工法」の工業生産技術をもちます。これによって、焼結工法の約10分の1の微細な組織をつくり、重希土類がなくても耐熱性を高めることができるのです。

ホンダは、10年ほど前から、レアアースを減らす研究を進めてきました。11年の価格暴騰後、開発が加速し、大同特殊鋼に声をかけたといいます。重希土類を使わない磁石を使うために、磁石の形状やモーター内部のローターの形状を見直して耐熱性を高めるなど工夫をこらし、今回の実用化につながった。

席上、本田技術研究所第4技術開発室第1ブロックマネージャーで主任研究員の貝塚正明さんは、次のように話しました。
「今回、われわれホンダのモーターの設計開発技術が高まったこと、大同特殊鋼さんにつくっていただいた磁石、両方そろって初めて、耐熱性等、従来のモーターと同一にすることができました」
実用化されるモーターの最高出力、最大トルク、最高効率は、従来のモーターと同等です。

モーターを使う車両には、現在、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、電気自動車、燃料電池車などがあります。
今後、通常のガソリン車に変わってこれらの環境対応車が世界的に増えるのは間違いありません。大型車両などへの搭載に向けて、さらなる性能向上を目指すといいます。
とはいえ、電動車両用のモーターが重希土類の制約を免れる術を得たことの意味は、大きいのではないでしょうか。

 

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