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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

トヨタが得たWWF(世界自然保護基金)の“お墨付き”

これまで考えられなかった“組み合わせ”といっていいでしょう。
世界最大の自然保護団体と世界一の自動車メーカーが“手を結んだ”ことです。画期的なことです。いったい、どういうことでしょうか。

WWF(世界自然保護基金)は、トヨタと「グローバルコーポレートパートナーシップ」を結びました。日本企業初、自動車業界では世界初です。
20日、両者は発表会を行いました。
協働期間は5年間。トヨタは、1年目の今年はWWFに100万ドル(約1億円)を寄付し、インドネシアなど東南アジアの熱帯林や野生動物の保全を図るプロジェクトを支援するといいます。

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※パートナーシップ説明会で手を握るWWFジャパン事務局長の筒井さん(右)とトヨタ環境部長の根本さん

WWFのグローバルコーポレートパートナーシップは、2015年末現在世界に約30件ですが、その審査基準は非常に厳しいといわれ、これまで自動車メーカーがパートナーシップを結んだことはありませんでした。

「正直いって、自動車産業はグレー産業と呼んでいました」
と、WWFジャパン事務局長の筒井隆司さんは語りました。
パートナーシップの締結にあたっては、WWF内で「かなり難儀をした」(筒井さん)といいます。現状、クルマをたくさんつくるほど、クルマがたくさん走るほど、CO2の排出量は増えますし、タイヤの原材料である天然ゴムを栽培する「ゴム園」をつくるために森林伐採が進んでいますから、WWFが自動車メーカーに懐疑的なのは当然です。

ではなぜ、今回のパートナーシップが実現したか。
WWFが評価したのは、昨年10月に発表した「トヨタ環境チャレンジ2050」です。新車のCO2を2050年に2010年比90%削減、製造時に工場から排出されるCO2を2050年にゼロにするなど、驚くほど高い目標を掲げているんですね。

「内山田(竹志)会長以下、加藤(光久)副社長などたくさんの経営幹部の方々と話をして、トヨタの環境チャレンジが本気であって、カーボンマイナスだけでなく、環境にプラスに作用することまで考えている。それをやるのが当たり前であって、それ以外にも森林の保全などの活動をやりたいという話をされて、そういう信念を経営トップのみなさんから聞いた」
と、筒井さんは語りました。

つまり、トヨタの「本気」を評価したんですね。
世界最大手のトヨタが率先して環境対策にコミットすれば、競合他社も対応せざるを得ない。WWFとしては、その意味は大きいと判断したのでしょう。

もっとも、トヨタ側でも、「環境チャレンジを出すにあたって、会社のなかでもかなりもめた。議論のレベルを超えてかなりもめた。環境に対してどう向き合っていくんだという、まさに大きなレベルで議論した」と、トヨタ環境部長の根本恵司さんは話しました。

トヨタが「環境チャレンジ2050」をまとめ、さらにWWFと組んだ狙いは何か。
「FCVの知財解放など、お金よりむしろそういうことが広がるように我が国をリードしてもらうことは、非常に大きな加点だった」と、筒井さんはトヨタを評価しました。
トヨタの推進する水素自動車であるFCV(燃料電池車)は、EV(電気自動車)やPHV(プラグインハイブリッド車)に押され、世界的な普及が難航しています。そのなかで、トヨタは、WWFから、水素普及への“お墨付き”を得たわけですね。

「トヨタ=環境」のイメージは一段と高まりました。
これらの意味は、大きいのではないでしょうかね。

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