Loading...

経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

サントリー山崎蒸溜所③  なぜ、国産ウイスキー人気に火がついたのか

日本でいちばん売れたウイスキーをご存じでしょうか。
DSC073293
1950年発売の「サントリー オールド」です。1980年代前半、国内のウイスキーの年間売上げ4500万ケースのうち、サントリーのウイスキーは約3000万ケース、そのうちの半分にあたる1240万ケースが「オールド」でした。1240万ケースといえば、一般の成人男性一人が一年間に「オールド」を6本、飲んだ計算になります。

国産ウイスキーの市場は、80年代にピークを迎えたものの、89年、大きな転機を迎えました。ウイスキーの等級が廃止されて、国産との税率差が解消し、焼酎との税率格差も大幅に是正されたことから、輸入ウイスキーの価格が大幅にダウンし、国産ウイスキーは窮地に立たされたんですね。

さらに、アルコール飲料の多様化、かつてアルコール市場を支えた企業戦士の定年退職が、ウイスキー需要の減少に拍車をかけました。

ウイスキー復権の秘策として、サントリーは2008年頃、ウイスキーをソーダで割った「角ハイボール」を提案したんですね。これが、若い人たちの心をとらえました。もっとも、私のような古い世代からすると、「ハイボール?いまさら……」とも思いましたがね。

ただ、「角瓶」がウイスキー市場を牽引する力になっているにしても、年間の売上数量は370万ケースにすぎません。「オールド」の3分の1です。かつてほど、ウイスキー需要は伸びていないんですね。

佐々木さんは、次のようにコメントしました。
「かつてのウイスキーの売上げが、それほど大きかったということですよね」

確かにそうでしょうね。残念ながら、私もめっきり、ウイスキーを飲む機会が減りましたからね。

かつて、サントリー山崎蒸溜所を取材した際、あるブレンダーが私に「いつか、こんなにおいしい、味わい深い日本のウイスキーがあると世界に広めたい。それが私たちの仕事ではないかと思う」と語っていたことが思い出されます。

問題は、モルト原酒の在庫不足です。実際、サントリーは、モルト原酒不足のため、主力の「響」「山崎」「白州」の一部商品の出荷を抑えているといいます。

「私たちにしてみれば、つくったものをおいしく飲んでいただきたいと思っているのですが、瓶の口があかないまま、値段だけが上がっているという変な現象が起きています。投機に使われているところもあると思いますね」
と、佐々木さんはいいます。

モルト原酒は、熟成に長い年月を必要とします。国産ウイスキーが海外で人気を博していることはうれしいニュースですが、ウイスキーメーカーにしてみれば、手放しで喜んでもいられない事情があるということでしょうかね。

ページトップへ