東芝の再建は、いったいどうなっていくのでしょうか。
東芝は29日午前の取締役会で、子会社ウエスチングハウス(WH)の米連邦破産法11条の適用申請を承認し、WHは同日、申請しました。これによって、2016年度通期決算から、WHは東芝の連結対象から外れます。
東芝は、2006年にWHを買収し、原子力事業の拡大を目ざしてきましたが、福島の原発事故を受けて、アメリカで原発に関する安全基準が高まったことから、原発の建設にかかる費用が拡大。その結果、東芝は巨額の損失を被り、経営を脅かされていたことは、これまでもブログに書いてきた通りです。
東芝としては、何度も書いてきたように、将来の損失拡大を防ぐために、WHを連結対象から切り離したかったわけです。
WHを他社に売却できればいいのですが、しかし、巨額の損失を抱えたままでは、できないというか、買い手が見つからない。究極の手段として、東芝はWHの破産法適用申請を選択したわけです。
果たして、最大の懸案だったWHの法的処理は、東芝再建に向けた明るい兆しなのか。いやいや、そう簡単ではありません。
東芝は、親会社としてWHに約8000億円の債務保証をしており、「貸倒引当金を見積もった場合には、(中略)当期純損益は、2017年2月14日に公表した▲3900億円から、▲10,100億円となる可能性があります」(東芝IRニュース)としています。債務超過額も、▲6200億円となる可能性があるとしている。
また、破産法が申請され、原発の完成が遅れれば、電力会社は借り入れた建設資金の返済がとどこおりかねません。これによって、保証をつけた米政府がその一部を肩代わりするリスクが高まることになるのか。日米政府間の調整も難しいところです。
ただ、裁判所が関与する形でWHの債務の整理や契約の見直しが進めば、売却を進めやすくなると見られます。WHの支援先については、韓国電力公社グループなどがあがっていますが、どうなるかまだ、わかりませんよね。
明日3月30日午前10時からは、東芝の臨時株主総会が幕張メッセで開かれます。決議される議題は、「吸収分割契約承認の件」です。
半導体メモリ事業の分社化が24日の取締役会で正式決定されましたが、臨時株主総会で株主の承認を受ける必要があります。明日の臨時株主総会は、半導体メモリ事業の分社化が決議されるかどうかの重要な場です。株主の承認を経て、4月1日、新会社「東芝メモリ」が発足することになっています。
東芝は、新会社の株式の過半数を売却する計画で、今日、一次入札が締め切られ、10社以上が興味を示しているとされます。しかし、技術流出を懸念する声は多く、紆余曲折が予想されます。
結局、東芝をめぐる混乱は当分の間、おさまりそうにありません。
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