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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

パナソニックが本気でグーグルに挑む

ご存じのように、AI(人工知能)やIoT、ビッグデータ、ロボットなど、新しい技術が産業界を席捲し、ありとあらゆる業界の勢力図を劇的に塗り替えるといわれています。このままでは、日本は、新しい技術の波に乗り遅れてしまうのではないかといわれるほど、変化のスピードは、すさまじい。

そうしたなかで、乾坤一擲の勝負に出たのが、パナソニックです。

パナソニックはこれまでも、ロボット掃除機、折りたたみロボット、多言語自動翻訳機、完全自動セルフレジ機など、実証実験も含めて、さまざまな商品やサービスを世に送り出してきました。

しかし、AIの急速な進展、そしてビッグデータやロボットが社会や暮らしにもたらす変化の早さは、そうした新規商品やサービス創出のスピードを大きく上回っている。

パナソニックはこの4月、本社部門に新しくビジネスイノベーション本部を設置し、AIやロボットなど、新しいビジネス領域における研究開発や新規事業の創出に乗り出しました。これは、パナソニックの危機感のあらわれといっていいでしょう。

断るまでもなく、AIやIoT技術は、取り組み方次第では新たなチャンスです。パナソニックが、あえて本社直轄で新事業創出にチャレンジするのは、AIやIoT技術の波をとらえて、10年先、20年先の事業を創出しようと考えているからにほかならない。


「同業のエレクトロニクス同士の競争はすでに終わっています。これからのコンペティターは異業種になってくるでしょう」

これは、ビジネスイノベーション本部長の宮部義幸さんのコメントです。

AIやロボットで先行しているのは、ITの巨人であるグーグルをはじめとする米国勢ですよね。パナソニックにとっては、いわば強力なコンペティターです。

グーグルなど異業種との競争を戦ううえで、キーパーソンとして期待されているのが、SAP日本法人バイスプレジデントから同本部の副本部長に就任した馬場渉さんです。馬場さんは、パナソニックの米国法人副社長も兼任していて、シリコンバレーを拠点に活動しています。

「私が住んでいるのは、シリコンバレーのパロアルトです。近くには、グーグルやアップルの本社があります。毎朝、通勤時に、グーグルの自動運転車が走っているのを見かけます」と、馬場さんはシリコンバレーの様子を語りました。

今回、その馬場さんをビジネスイノベーション本部の副本部長に抜擢したのは、シリコンバレー勢を強く意識していることに加えて、馬場さんが持つシリコンバレーの息吹をパナソニックに吹き込んでもらいたいと考えているからでしょうね。

「シリコンバレーの強さは、その考え方にあります。デザインシンキング、ユーザーエクスペリエンスの2つの考え方は、大企業にも適用できると思います」
と、馬場さんは語っていました。

新しい事業の創出には、従来の組織のあり方を変える必要があると同時に、新しい人材が欠かせない。そこで、パナソニックは、本社主導の「仕組みと体制」を整え、キーパーソンとして馬場さんを起用したというわけですね。

計画では、数100億円規模以上になるような新規事業を立ち上げるといいます。

グーグルなどの米国勢と伍して、この分野で戦うことができるかどうか。パナソニックの本気度と実力が試されているのは間違いありませんね。

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