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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

パナは「世界トップ10入り」を狙えるか

「世界トップ10に入る」――。
パナソニックが自動車部品メーカーのトップ10入りに挑戦すると宣言した。
つまり、デンソーやボッシュと並ぶティア1を目ざすというのだ。
果たして実現は可能か。なぜ、そこまで強気なのか。

※パナソニック東京汐留ビル

パナソニックのオートモーティブ&インダストリアルシステムズ社(AIS社)社長の伊藤好生氏は、先月30日、投資家向けの事業説明会で、「2021年度に売上高2兆5000億円を実現し、自動車部品メーカーのトップ10入りに挑戦する」と述べました。

快適、安全、環境の3分野に関わる車載事業をシステム領域に拡大することで、売り上げの伸びを想定しています。

布石は打たれてきました。サイドミラーなどを手掛けるスペインのフィコサを2017年3月に連結子会社化しました。フィコサは自動車メーカーに直接部品を供給するティア1メーカー。フィコサとの連携強化により、電子ミラーなどの車載事業を強化しようというわけですね。

また、ドイツの車載コックピットソリューション向け組み込みソフトウェアの開発会社オープンシナジー社を16年7月に子会社化しました。オープンシナジー社が保有するソフトウェア技術は、複数の異なるオペレーティングシステムを1つのシステム上に統合することができ、マルチメディア機能と運転者支援機能とが統合された次世代コックピットシステムを実現できます。

つまり、車載事業をシステム領域へと拡大するために、着実なステップを踏んできた。それが自信につながっています。

「インフォテインメント×ADAS×フィコサの電子ミラーと通信モジュールの掛け算で相乗効果を出せるようなものを検討しています。そうでなければ、サムスン電子とハーマンの連合に勝つことができない」と、伊藤氏はコメントしました。

伊藤氏のコメントで明らかになったように、AISがベンチマークしているのは、韓国のサムスン電子なんですね。相当、手ごわいライバルと見ていいでしょう。

というのも、サムスン電子は16年11月、米自動車部品大手のハーマン・インターナショナル・インダストリーをサムスン史上最大規模といわれる80億ドル(約8900億円)で買収し、自動車分野に本格参入しました。サムスンの車載分野強化に向けた、強い姿勢のあらわれと考えられます。

サムスン電子が自動車分野に本格参入してから、まだ8か月しかたっていません。しかし、後発とはいえあなどれない。これまでのサムスンを見ればわかるように、あっという間に自動車メーカーに喰い込み、一気に巻き返しを図るだろうことは想像に難くない。

サムスンには、それだけの技術力と資本力があります。サムスンのエレクトロニクス技術とハーマンが得意とする車載分野の開発力を融合すれば、競争力の高い車載システムの開発が可能だからです。サムスンはまた、密かに自動運転の実験も行っているといわれています。

「これまでの車載分野における先行投資の刈り取りが始まる17年度以降は、増収増益に向けた確かな道筋が見えています」と、伊藤氏は強気です。

強気であっていいと私は思います。成長領域で競争力を確保するには、大胆な戦略と行動力が不可欠です。「世界トップ10入りに挑戦する」といいきるくらいの大胆さがなければ、競争には勝てないですからね。

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