日産、ルノー、三菱自動車の3社連合が販売台数で世界トップに躍り出た。
※三菱自動車の会長を兼務する日産会長のカルロス・ゴーンさん(左)と三菱自動車取締役CEOの益子修さん(2016年5月12日撮影)
燃費不正問題で経営危機にあった三菱自動車を傘下におさめたカルロス・ゴーン氏の大胆な決断、そしてアライアンスの成果といえますね。ただ、厳しい見方をすれば、“足し算”で「世界一」になっただけともいえます。
トヨタ自動車の2017年上期(1~6月)の世界販売は、子会社のダイハツ工業と日野自動車を含めて、512万9000台、フォルクスワーゲン(VW)は、515万5000台です。
これに対して、日産自動車と仏ルノー、三菱自動車の3社連合は、1~6月、世界販売台数が前年同期比7%増の526万8000台になった。トヨタとVWを抜いて、初の世界トップに立ったというわけです。
「世界一は目標にはしていません。カルロス・ゴーンも同じ考えです」
日産の田川丈二常務執行役員は27日、決算説明会の席上、コメントしました。
たしかに「世界一」は目標ではない。とはいえ、「世界一」の獲得は大きな意味があるのもまた事実です。
その意味とは何か。ズバリ、コストを削減し、利益を伸ばすための土台を、3社連合は手に入れたということなんですね。
昨年5月12日に開かれた三菱自動車との資本業務提携に関する共同記者会見の席上、ゴーン氏は、次のように語りました。
「10年後、15年後を見て、自動車メーカーは、さまざまな技術開発に投資をしなければいけません。エンジンのラインアップも増やさなければいけないし、地理的な拡大もしていかなければいけません。相対的に規模の小さいメーカーは生き残りが難しくなるでしょう」
ただし、「世界一」になったというので浮かれているわけにはいかない。実際、3社連合が今後も販売台数を伸ばしていけるかは予断を許しません。また、販売台数「世界一」になったからといって、必ずしもそれが利益につながるとは限らない。肝心の利益拡大には、もう一段の取り組みが求められます。
今後の課題は何か。「量」の拡大と「質」の向上を両立させ、持続的成長を目ざすことです。
これまで何度も述べてきましたが、自動車メーカーは1000万台に手が届こうとした途端に、足をすくわれるケースが少なくない。トヨタは1000万台を目前に品質問題に見舞われ、VWは排ガス不正問題に翻弄されました。1000万台には“魔物”が潜むといわれます。
“魔物”の存在を肝に銘じて、経営にあたらなければ、それこそ地獄への一歩を踏み出すことになりかねない。
トヨタは、1000万台の壁をカンパニー制の導入によって突破しようとしています。それに対して、ゴーン氏の秘策はというと、“アライアンス経営”です。
ルノーと日産は、独立したブランドをもちながらも、生産や購買、開発など主要機能の統合を進め、あたかも一つの会社であるかのようにアライアンス経営を進めています。これは、いかなる自動車メーカーも経験したことのない“壮大なる実験”といえます。
ルノー日産アライアンスには、三菱自動車が加わり、その規模はさらに拡大しました。ゴーン氏主導のアライアンス経営は、1000万台の壁を乗りこえるカギとなるのか。
1000万台を目前に控え、アライアンスの会長兼CEOを務めるゴーン氏の役割は、いよいよもって重要になってきました。
「世界一」は吉と出るのか、凶と出るのか。ゴーン氏率いるアライアンスの真価が問われます。