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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

日本企業が、日本電産の永守会長から学ぶこと

前回のブログではなぜ日経平均が2万円を超えないのかについて書きました。その理由の一端として、企業統治などの理由のほか、そもそも日本の経営者が投資に腰が引けていることが影響していると記しました。

ご存知のように、さまざまな技術革新やパラダイムシフトを背景に、製造業を中心に幅広い変革が求められています。新たな投資をしないと、産業構造の変化についていくことができません。

ところが稼いだお金をどこに投資するかという決断は、日本企業は得意ではない。

財務省は2017年9月1日、利益余剰金の蓄積である内部留保が、過去最高の406兆円をこえたと発表しました。日本の企業が、巨額のお金を抱えこんでいるということです。

どういうビジネス像を描き、自らの収益につなげていくか。新たなビジネスを切りひらくには、M&Aやオープンイノベーションを通じて、自社にない経営資源を取り込んでいかなければなりません。

つまり、経営者はたくさんの決断を迫られているんですね。

ところが、サラリーマン社長は、保身に走りがちで、なかなか大きな決断ができない。というのも、新たなビジネスは必ずしも成功するわけではない。失敗すれば自分の成績にキズがつく。だからサラリーマン社長は、思い切った決断ができないんですね。

その点、自らの決断に責任を持つことができるオーナー社長は、リスクをかけてスピードある決断ができる。それに、オーナー社長は大きな夢を語ることができる。新たなビジネスを切りひらくには、大きな夢が重要なんですね。大きな夢は社員をひっぱっていく力になるからです。

オーナー社長の中で、私が今、注目している一人が、日本電産会長兼社長の永守重信さんです。「世界一になる!」という目標を掲げて、1973年に仲間3人と京都市左京区の小さなプレハブ小屋から精密小型モータの会社をスタートさせた。

〝公約″通りに「世界No.1の総合モータメーカー」となり、グループ企業約240社、連結売上1兆円を超える大企業に成長した。

永守会長に取材をした時、私が印象的だったのは、次の言葉です。
「リーダーは丸投げしたらあかん。他人に決めさせたらあきまへんがな。ビジョンを語らな。そして自分で決めなあかん」

そして、彼は、こんな言葉を吐きました。
「早糞、早風呂、早飯」――。
これは、永守会長のお得意の言葉ですよね。つまり、人より何事でも一歩先に活動することを重視するんですね。

例えば、いまはさすがに違うと思いますが、1977年の第1回の採用試験では、早食い競争で合否を決めました。成績がいい人、頭がいい人を採用するのではなく、やる気のある人、一生懸命働こうという意識がある人を採用したんですね。

取材を終え、永守会長のアグレッシブな言動に、私自身とても元気になったことを覚えています。

経営者は「夢」を持つべきなんですね。加えて、今の経営者に求められるのは、技術マップと、将来を見通す眼力です。

また、永守会長は、創業以来「人の倍働く」をモットーに、365日休みなく働いてきたことでも有名ですよね。

しかし、かねてより「売上が1兆円を達成したら働き方改革をする」と公言して、ついに2016年10月に「2020年に残業ゼロにする」と宣言しましたね。全社を挙げて生産性を2倍にする「働き方改革」の活動をスタートさせています。

具体的には、残業の許可制度、会議の時間を短縮。また1000億円を投資し、最新ロボットやスーパーコンピュータを導入して仕事の効率化をはかっています。

こうした姿勢は市場からも評価され、日本電産の株価は近年、上昇トレンドです。次々と新しい改革を実行し、最高益を上げ続ける永守会長は、今度はどんな手を打つのか。これからも目が離せませんね。

日本企業のトップは永守会長から学ぶことがたくさんあると思います。

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