日産自動車は8日、2017年度第3四半期累計の連結営業利益が前年同期比27.6%減の3642億円となったと発表しました。国内工場での完成検査不正に関する費用計上や苦戦する米国での在庫調整が収益を圧迫したと見られます。
※常務執行役員の田川丈二氏
「国内の受注は戻ってきており、3月末には生産体制も正常化する」
と、常務執行役員の田川丈二氏は述べました。
しかし、昨年秋の無資格検査問題の痛手は小さくありません。減益幅は、従来予想の1.5倍の900億円に拡大しています。
「リコール費用300億円とその他の費用300億円の合計600億円を見込んでいましたが、さらに追加で300億円かかりました。また、利益率が高い輸出車の生産スピードが戻らないことも想定以上の痛手となりました」
と、田川氏はコメントしました。
2017年度の通期見通しは、連結純利益が前回見通しから1700億円改善し、7050億円と過去最高が予想されていますが、これは、米トランプ政権の法人減税効果の2076億円を見込んでいるからです。
本業の儲けを示す営業利益は、前回に引き続き、5650億円へと下方修正しました。
要因は、ズバリ、米国での収益悪化です。かねてから値引きの原資となる販売奨励金の積極投入が指摘されてきましたが、その負担に苦しめられているといっていいでしょう。
その反省を込めて、田川氏は、次のように語りました。
「米国市場の成長に軸を置きすぎました。米国の全需が1700万台でピークアウトするなか、収益と成長のバランスをとっていかなければいけない。今後は、販売の質を上げることに集中しなければいけないと考えています」
日産は、「日産パワー88」以降、米国の販売を伸ばすことに力を注いできました。ところが、米国の自動車市場の失速を受けて、米国頼みの戦略は見直しが迫られているんですね。
日産が米国に並ぶ成長の柱に位置づけているのが、中国です。
すでに、日産の中国合弁は、5年間で600億元(約1兆円)の投資を発表しています。22年までに発売する40車種以上の新車のうち、20車種以上をEVまたはエンジンで発電し、モーターで駆動する車種にする計画です。
稼ぎ頭の米国の新車販売が頭打ちとなるなか、日産に限らず、日本の各メーカーが中国シフトへと舵を切りましたが、果たして思惑通りにいくかどうか。
ご存じのように、中国では19年、自動車メーカーに一定割合のEVなどの生産と販売を義務づける「NEV規制」が始まります。
日産も中国で主導権をとるため、生産能力増強などに取り組んでいますが、中国市場はこのまま成長路線が続くのかどうか。
中国市場が、米国にとって代わる市場になるかどうか。厳しい目が求められるといっていいのではないでしょうか。