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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

ホンダジェットが“エアタクシー”になる

ホンダは、フランスのエアタクシーサービス提供会社のウィジットから、ホンダジェットを16機受注したといいます。

ホンダジェットはベリーライトジェットと呼ばれる7人乗りのジェット機です。開発開始は1986年。06年に受注を開始し、100機以上を受注。15年末から引き渡しが開始され、17年上半期には、世界で24機を納入して小型ジェット機カテゴリー世界一になっていたんですね。


※ホンダジェット

“エアタクシー”とは、まさに航空機版のタクシーです。小型のビジネスジェット機を利用し、不定期に、目的地まで直行運行する。ITやネットワーク技術を使えば、機体やパイロットとユーザーの最適なマッチングが可能です。ウィジットは現在、15機のビジネスジェットを所有し、欧州と北アフリカの約1200の空港で“エアタクシー”の運行を行っているといいます。

さて、ホンダジェットといえば、私は昨年9月にホンダジェットの開発物語である『技術屋の王国――ホンダの不思議力』(東洋経済新報社)を上梓しました。長い取材期間の間に、多くの関係者から話を聞きましたが、ホンダの米国法人社長を長く務めた元ホンダ副社長の雨宮高一さんから、“エアタクシー”の話を聞いたんですね。

ホンダジェットにつながる機体の開発は、1986年に米国で5人の若者からスタートしました。

雨宮さんによれば、その直後、当時米国ホンダのトップだった彼のもとにGE(ジェネラル・エレクトリック)のファイナンス部門の幹部がやってきた。その幹部曰く、GEは、将来的に“エアタクシー”事業強化を検討中で、そのファイナンスを手掛けたい。ついては、ホンダはジェット機をつくるとか聞いたが、“エアタクシー”に興味はないか、といってきた。

当時、ホンダの航空機はまだ形になっておらず話は立ち消えたそうですが、GEは当時から、“エアタクシー”の将来的な普及を予測していたということですね。

それから、ホンダジェットの開発者で、ホンダの航空機事業を担うホンダエアクラフトカンパニー社長の藤野道格さんからも、16年に、“エアタクシー”の話を聞きましたね。

「EUは、ホンダジェットの航続距離で全体をカバーできます。中東まで飛んでいけるような大きな機体は、EU内のような短距離の移動では効率が悪い。そこで、ローカルの“エアタクシー”やチャーターの事業者の間では、ホンダジェットのような小型サイズが重要視されているんです。ユーザーも、米国は個人で購入される方が多いですが、ヨーロッパはチャーターされる方が多い。まず個人の方、次にチャーター、そして“エアタクシー”と、三段階で考えています」
と、彼は話していました。

今回の受注は、ねらい通り、ヨーロッパ圏の“エアタクシー”事業者にホンダジェットを売り込むことに成功したということでしょう。

ホンダジェットの話は、「いつになったら収益に貢献するのか……」となりがちです。しかし、世界の空をホンダ製のジェット機が飛び回ることによるブランド価値の向上は、数字だけでは表せないことは、いうまでもありません。

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